ニュース

なぜ官僚の不正は立件できないのか? ノンフィクション作家・清武英利氏が語る「捜査機関の闇」

 実際、汚職事件の検挙数は激減している。  警視庁の贈収賄事件の摘発件数は、2000年代前半には年間10件を超えることもあったが、後半には年間5件ほどに半減。2014年にはついに「ゼロ」になった。 「見過ごせないのは、こうした減少傾向が警視庁に限った話ではないということです。全国の道府県警や検察庁でも、汚職の摘発は激減している。  同じ犯罪でも、殺人は直接的に人を殺すが、汚職や公務員犯罪は内側からゆっくりと社会を殺す。摘発がゼロ件といっても、汚職は見えないところで蠢いている。日本社会は今も蝕まれているのではないか」  ノンフィクション作家、清武英利が一貫して持ち続けているテーマがある。それは、市井の「後列の人(トップランナーではなく、後ろの方にいる人々)」だ。今回、受賞作のタイトルに使われた「石つぶて」も「石ころ」という意味だというが、本作では警視庁捜査二課に籍を置く「古い二課刑事」の姿をつぶさに追いかけている。  2001年、外務省で「ノンキャリの星」と呼ばれた職員が、着服した公金で次々と愛人をつくり競走馬を何頭も所有していたことが発覚した。霞が関に激震が走った後に「外務省機密費流用事件」と呼ばれる事件だが、この巨額流用事件を掘り起こしたのも、二課の名もなき刑事だった。 「あの事件は、かつての清濁併せ持つ捜査手法が生きていた時代の、最後の事件なのかもしれない。官僚たちから見れば、二課刑事は“はみ出し者”かもしれないが、そうした刑事たちがいたからこそ、汚職と公務員犯罪が闇に葬り去られることはなかった」  大事なことは、こうした二課刑事たちの捜査や執念を昔話にしないことだ。  5月10日、折しも、「加計学園」の獣医学部新設問題をめぐり問題で、元首相秘書官の柳瀬唯夫経済産業審議官が衆参両院に参考人招致されたばかり……。  権力と官僚社会は、常に腐敗する――。  ならば、私たちは無関心を装うことなく、そこへ向けて「石つぶて」を投げ続けなければならない。警視庁や地検特捜部には「はみ出し捜査員よ、現れよ」と期待したい。 【清武英利】 1950年、宮崎県生まれ。1975年、読売新聞社入社後、警視庁、国税庁を担当。中部本社社会部長、東京本社編集委員、運動部長を経て、2004年に読売巨人軍球団代表兼編成本部長に就任。2011年、専務取締役球団代表兼GM・編成本部長・オーナー代行を解任される。著書に『しんがり 山一證券 最後の12人』(講談社+α文庫)、『奪われざるもの SONY「リストラ部屋」で見た夢』(同)、『プライベートバンカー カネ守りと新富裕層』(講談社)、『空あかり 山一證券“しんがり”百人の言葉』(講談社)など 取材・文/日刊SPA!取材班
1
2
Cxenseレコメンドウィジェット
おすすめ記事