ライフ

「世界最悪の眺め」のホテルに行ってみた。覆面アーティスト、バンクシーがオープン

イスラエル軍の監視カメラやパレスチナ人のパチンコもアートに

アート展示

ホテル内には、バンクシーの作品があちこちに展示されている。監視カメラの模型などが壁に掛けられている

 剥製の首のように壁にかけられているのは、イスラエル当局の監視カメラの模型。イスラエルが自国の「首都」だと主張し、その帰属が争われ続けている聖都エルサレム、特にパレスチナ人も多く住む旧市街は監視カメラだらけ。そうしたイスラエル当局の監視を表すオブジェなのだ。  さらにこのカメラの下にはパチンコも壁にかけられている。これは、パレスチナ人がイスラエル治安当局や軍に対する抗議活動の際によく使用されるもの。同じくロビーにある絵には、パレスチナ人とみられる親子が巨大なブルドーザーに追い立てられている姿が描かれている。  パレスチナ自治区ヨルダン川西岸は、その大部分の行政権がイスラエル側にあり、パレスチナ人の家は「違法建築」扱いなのだ。そのため、イスラエルがユダヤ人入植地や軍用施設を新たにつくる際などに、パレスチナ人の家々は情け容赦なく取り壊されてしまう。つまり、これらバンクシーの作品は、ウィットやブラックユーモアでパレスチナ占領の実態を表しているものなのだ。

美術館としてだけでなく、パレスチナ問題に関する博物館としての展示も

受付の女性

ホテルの2階には、無料で観覧できるギャラリーがある。主にパレスチナ人作家達の作品を展示しているとのこと。受付の女性も、気軽に写真撮影に応じてくれた

 ウォールド・オフ・ホテルには、客室やロビー以外にも見どころがある。1階の奥は、パレスチナ占領をテーマにしたミニ博物館となっており、分離壁の解説(英文)やイスラエル軍がデモ鎮圧に使うゴム弾や催涙ガス弾の実物などが展示されている。2階には、無料で観覧できるギャラリーが。こちらはパレスチナ人アーティストらの作品の展示や、関連の企画展が行われている。まさにホテル全体で社会派アートが楽しめる造りだ。  ウォールド・オフ・ホテルのあるベツレヘムは、通常は治安も良く(*)、エルサレムからも乗り合いタクシー(セルビス)で気軽に行ける。パレスチナ問題や社会派アートに関心のある人には、ぜひおすすめしたい。 *現地情勢は日々変わっています。現地を訪れる際には、各メディアの報道や外務省のウェブサイトでご確認のうえ、ご自身の判断・責任で訪問ください。 ※『週刊SPA!』5/22発売号「緊急現場ルポ【パレスチナの虐殺】」より 取材・文・撮影/志葉玲
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週刊SPA!5/29号(5/22発売)

表紙の人/ 小倉優香

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