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サッカーW杯を野宿観戦した男が悟った「日本人よりロシア人のほうが優しい」

ロシアで一番危険なのは強盗ではなく、田舎町にたくさんいる大きな野犬!

――その辺の道で寝て危険なのでは? 市川:う~ん、野犬はヤバかったですねぇ。 ――野犬ですか? ロシアでは野生化した野良犬が問題になり、大会前に大量に殺処分された、というニュースもありました。 市川:確かに都市部はほとんどいませんでしたが、少し歩けば出てきます。しかもドーベルマンのような大型犬ばかり! もう対峙すれば「噛んでやる!」という威嚇の眼差し。ちょっとした田舎道にはたくさんいて、もう何度も逃げました……(苦笑)。
野犬

画像中央に、市川氏に襲いかかった野犬の姿が確認できる

――あの、人の危険さとかは……。 市川:会場前には警備員も多く、入場チェックもかなり入念で、問題をおこさないよう徹底された大会に感じました。心配していたフーリガンも、ネオナチもいたのかな?と思うほど、お祭りごとを楽しんでいる印象。スリには警戒していて、一度、都市部のベンチで寝てしまったときに、手に持っていたスマートフォンが落ちたんです。そんな様子を見ていたロシア人男性が「携帯が落ちているよ!」と拾ってくれました。あとは、ロシアの親切心は日本人を上回ると思います。 ――日本人よりですか? 市川:はい、街にいるロシア人は困っている人を見かけたら、進んで声をかけてくれる。道に迷っているだけで「困っているのか?」と案内してくれる。モスクワに向かうための道を聞いただけなのに、「俺の車に乗っていくか?」と乗せてくれたり。あと、一番驚いたのが、間違えて高速道路を歩いていたら女性ドライバーが停まってくれて、「こんな場所歩いたら危険だから乗りなさい!」とピックアップをしてくれたことです。 ――女性ドライバーが1人でですか? 市川:はい。普通、こんな薄汚れた異国の男性なんて車に乗せますか? 日本だったら性犯罪などを警戒して、100%乗せてくれない。W杯期間中で国民にボランティア精神があるかもしれませんが、野宿をする中で何度もロシアの人たちには助けられました。冷淡なイメージ? とんでもない。ロシアは僕にとって世界一治安の良い国。冷たいのは、日本人のほうかもしれませんね。ちょっとシステマチック過ぎる部分がありますし、基本は野宿していても無関心ですから。  次の2022年カタールW杯でも、市川氏は全て野宿、ほぼ徒歩移動を予定しているという。世界の路上で寝たことで知った日本人の冷たさを、2020年東京五輪で訪日客は知るのかもしれない。 <取材・文/カトウカジカ> 【市川野宿】 26歳、元ホームレス高校生。普段は日雇いをしながらFC東京のサポーターとして国内、世界を“野宿”で遠征する。『クレイジージャーニー』の丸山ゴンザレス氏も“ヤバい旅人”として評価している。ブログ『野宿ブログ~地球に泊まる~
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