底辺から青天井まで…風俗もドラッグもある
しかしながら、“スタイリッシュで洗練されたニューヨーク”というのがほとんどの人のイメージだろう。危ない場所なんて本当にあるのだろうかと再び疑問がわいてくる……。
「いろんなひとに聞かれますし、僕も最初はそう思っていたのですが。『
あるに決まってるでしょう、ニューヨークなんだから』と言いたい(笑)。もちろん、留学していたり、駐在していたりするようなひとに聞いても、そういった話はなかなか出てきません。風俗やドラッグも街中には看板など出していませんが、いろんなひとのツテを使って取材をしていくうちに段々あることがわかってきて。実際は、知られていないだけで様々な種類の闇が存在していることがわかったんです」
廃屋が立ち並ぶ寂しい通りに売春宿がある。一見客では見つけられないだろう
ニューヨークでもドラッグや売春は違法である。絶対に手を出してはならないが、ゴンザレス氏はどこでどんなひとたちが関わっているのか気になったのだという。
「ニューヨークには、
国籍や階層ごとにコミュニティができあがっているんです。中国や韓国、ヒスパニック系……当然、日本人だけがいる裏ビジネスだって存在している。そこで扱われる商品の金額はピンキリですが、ニューヨークにおいて非常に興味深いのが、“
天井がない”ことです。たとえば風俗なら、割と知られているコリアンタウンのマッサージ店が200~300ドルぐらいですが、もっとローカルな場所なら50ドルでもあります。さらにヤク中の売春婦たちなんかは20ドルでブロウジョブ(フェラチオ)とか……。一方で、ウォール街の成功者が行くような最上級のエスコートクラブで働いている女のコは1か月で10万ドルとか余裕で稼いでいるみたいです」
こうした相場感からもゴンザレス氏は、「貧しい労働者から世界中のトップクラスまで集まる場所ってことを実感した」のだと言う。だからこそ本書にはハイクラス層の遊びから発展途上国のスラムみたいな話まで同じ街とは思えない多種多様なネタが埋蔵されている。
その裏にはマフィアやギャングもいることだろう。そういった闇の存在に縛られることもなく、ニューヨークでは一般人の遊び方も人それぞれ多様性を見せるのだという。
「クラブにしても階層によって訪れる場所がまったく異なる。若者たちの出会い方もスマホアプリを利用したり、プライベートパーティがあったり、LGBT向けにはハッテン場があったり……。さまざまな立場の人に応じた遊び場があって、自分たちに合った遊びをしているんですね。ニューヨークに関する本はたくさん出ていますが、そういった遊び場のすべてをカバーできているわけじゃない。全然追いついていない。そういうところも歌舞伎町と同じなんです。自分から掘ろうと(必死のリサーチ)しないとわからないことだらけ。だからこそ、惹かれたんですけどね」
ビジネス、ファッション、アート、音楽……。いわゆるニューヨークの“憧れの街”というイメージはもちろんだが、そこは東京以上に多くの人種や職業が集まる街。すべてを内包していることが巨大都市ニューヨークならではのディープな魅力なのかもしれない。<取材・文/藤山六輝>
ライター・編集者。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』(共に彩図社)など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ【最新版】』(辰巳出版)がある。Twitter:
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