愛国のリアリズムで真贋を見分ける①――物事の本質を見誤る「お花畑の左派」の人々

高橋洋一氏の著作。左は今年9月の新刊。右側は昨年9月に発刊。

 元財務官僚で我が国有数の政策通である高橋洋一氏の新刊『愛国のリアリズムが日本を救う』(発行=育鵬社、発売=扶桑社、今年9月発刊)が評判を呼んでいる。  まず、『夕刊フジ』(9月11日号)や月刊『正論』(11月号)の書評で取り上げられ、またネットのブログ、伊勢雅臣氏の【国際派日本人養成講座】や、【本ナビ:本のソムリエの一日一冊書評】などで高い評価を得ている。(夕刊フジと正論の書評内容は、本連載の2回目に画像で紹介)  ちょうど1年前に発刊した『日本を救う最強の経済論』(発行、発売は同上)では、日本経済の成長を止めた日銀によるバブル退治のお粗末さと、財務省の財政均衡主義による消費増税論の間違いを体系的に論じ、優れた「経済的な物の見方」を提示して評判を呼んだ。  今回の新刊は、世にはびこる言説の「真贋(しんがん)の見分け方」を提示している。つまり、何が本物で何が偽物かという見極めだ。  著者の高橋洋一氏は、もともと数学者を志し東京大学理学部数学科卒業後、学士入学で同大経済学部に籍を置きつつ統計数理研究所(旧文部科学省統計数理研究所)で非常勤研究員となる。翌年の正式採用を待って数学者の道を歩み始めるはずが採用の約束を反故(ほご)にされ、やむなく断念。経済学部を卒業後の1980(昭和55)年に、大蔵省(現・財務省)に入省したという変わり種の経歴の持ち主だ。  この経歴から分かるように彼は、数学的思考に秀でており、論理的整合性、政策的合理性を重んじているため、世の中の右や左というイデオロギーには、もともと無縁の人物であった。

「お花畑の左派」は、結果として国益を害してしまう

 その高橋氏が今般、何ゆえに「愛国のリアリズム」を唱えたかは興味深い。 (安全保障政策などで)「お花畑の左派」は、自分の理想に酔って自己主張するが、データが乏しくその説得力がない。そして、リアリストに議論で対抗しようとする。リアリストが国益をベースとすると、結果として、それに対抗するお花畑論者は国益を害してしまうのは滑稽である。(本書、237ページ)  ここでいうお花畑とは、ネットなどでよく見られる表現で、きれいなお花に囲まれた夢心地の思考をする人をいう。世の中の現実と遊離し、理想郷を思い浮かべ生きる、ある意味幸せな人である。ここで、リアリストと「お花畑の人」との思考法の違いを整理してみよう。  リアリストの人は、世の中の客観的な事実を分析して結論を出す人で、他の人でも検証可能な「根拠(データや証拠)」を持っているので説得力がある。一方、お花畑の人は右にせよ左にせよイデオロギーが強いため、思い込みという結論が先にあり、その結論に都合の良い現象の断片をつなぎ合わせ主張する。  この違いは、警察の犯罪捜査の手法から考えると分かりやすいかもしれない。  前者は「鑑識」と呼ばれる科学捜査の手法で、現場に残された指紋、血痕(けっこん)、体毛、繊維、足痕跡や付着していた土壌など、遺留品を科学的手法で徹底的に検証するとともに、司法解剖による犯罪時刻の推定など、多角的・多面的手法を基に事件の真相に迫り、犯人を浮き彫りにしていく。  後者は「動機」を重んじる捜査手法で、目撃情報や人物の評判など、聞き込み捜査から犯人を絞り込み、最後は自白によって犯人を特定する。 【2】に続く 文責=育鵬社編集部M
愛国のリアリズムが日本を救う

愛国に右も左もない。あるのは、日本に対する責任感だ! 左派リベラルの観念論を論破し、国益と政策的合理性の追求を解き明かした渾身の書

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