愛国のリアリズムで真贋を見分ける②――思い込みの強い人は冤罪事件を作り出す

『夕刊フジ』9月11日号(左側)と『正論』11月号(右側)の書評

 前項で記したように犯罪捜査において、鑑識を重んじて科学的にアプローチするのか、動機を重んじて自白を得るのかは、大きな違いが生じる可能性がある。  後者では、「あの人物は地元で評判が悪く、またいざこざを起こしていたという聞き込み情報があり、犯行時刻頃にその場所を歩いていたという目撃もあり、きっと犯人に違いない」として逮捕し、自白を得るというパターンである。  冤罪事件は、鑑識を重んじた科学捜査を軽んじて、「きっと犯人に違いがない」という「思い込み」で自白を強要して発生する。  本来、左派系の人々は、こうした冤罪事件を批判しているにもかかわらず、国の安全保障などの政策になると、「思い込み」の思考回路で物事を見ようとする悪癖(あくへき)が出てくる。例えば、次の通りである。

世界中、日本だけが「愛国」を嫌う不思議な現象

「安倍政権は、右派的体質を持っており、集団的自衛権の行使を可能にして、戦争を起こそうとしている」  この文章で唯一正しいのは、「集団的自衛権の行使を可能にした」という点だけであり、戦争を起こそうとしているという論理展開は、まったく根拠がない。根拠がないことを平気で断定する一部の憲法学者やジャーナリストは、自らの言動が冤罪を生み出す捜査手法と何ら変わりがないことを、肝に銘じた方がよい。  さらに言えば、安倍政権の雇用政策は、低金利という金融政策をベースとした世界的に見れば「左派政策」であり、こうした分析をせずに先入観で右派的体質と決めつけるのは誤りである。  高橋洋一氏は、『愛国のリアリズムが日本を救う』で次のように述べる。 「集団的自衛権を行使すると戦争になる」と左派系野党や一部マスコミは主張するが、果たしてどうなのか。(中略)むしろ、戦争にならない確率をどう高めるかが現実的な課題となる。筆者は、過去の戦争データなどを検証した結果、集団的自衛権を行使した方が戦争になる確率は低いと見出した。その詳細は本文を読んでいただきたいが、裏付けのない理想や観念的なイデオロギーだけで政策を語るのは、共同体でともに生きる国民に対して余りに無責任である。(中略)中国や北朝鮮などと親和性の高いわが国の一部の学者、評論家、ジャーナリストは、「中国ムラ」から便宜を図ってもらっているのか、米国との同盟を忌み嫌う。リアリズムから言えば、米国との同盟の方が米国から攻撃されないことを含めて、戦争確率が低下する。(本書、4~6ページ)  愛国とは、共同体で共に生きる国民の利益を図ることである。  世界のどの国も、政策決定において愛国(国益を守ること)が判断基準となっている。しかし、わが国・日本だけは、地球上の数少ない例外として、愛国を表明することが憚れる雰囲気が今日まで続いてきた。戦前の戦争体験によって戦後教育は、愛国という言葉を発することをタブー視するのみならず、何か悪いことのように教え込んできた。  著者は、この風潮を「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹くことでしかない」と論じる。(本書、4ページ) 【3】に続く 文責=育鵬社編集部M
愛国のリアリズムが日本を救う

愛国に右も左もない。あるのは、日本に対する責任感だ! 左派リベラルの観念論を論破し、国益と政策的合理性の追求を解き明かした渾身の書

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