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女性ポルノ研究者が「女性向け風俗」を真面目に人類学してみた

女性向け風俗 ホテルの部屋に入ると、施術の準備として交互にシャワーに入り、カウンセリングシートで今日の気分や性感について質問された。アロマの香りと森林風のBGMが流れるなか最初は緊張をほぐすためのハグから、そのままオイルマッサージへ。耳元で優しく囁かれながら、背中、鼠蹊部を含む両足、デコルテ、胸とマッサージからのソフトタッチ性感の順で刺激された。普段のマッサージでは触られることのない鼠蹊部、胸、と言ったわかりやすい性感帯をマッサージされ、イヤらしすぎない快感に包まれた。「ものすごく丁寧な前戯」というイメージだろうか。  施術後は再度、お互い別々にシャワーを浴びてオイルを落とし、そのまま一緒にラブホテルをチェックアウト。新宿駅まで手を繋ぎ、談笑しながら帰宅。最後にハグをしてお別れ。終始とても大切に扱っていただき、最初の緊張が嘘のように消えていた。多幸感に包まれ、その夜はぐっすり眠れた。  終始リラックスした雰囲気で奉仕してもらうのは、もちろん気持ちいい。しかし、実際に体験をしてみてからの疑問として「性感マッサージで本当に性欲が解消されるのか否か」という点がある。これは、女性だけでなく人間自体のオーガズム自体が未だちゃんと解明されていないため、今後の研究課題とさせていただきたい。  さて、このタイプの女性用風俗にはどのような利用客が多いのだろうか。あす香氏曰く「6割が男性に対して抵抗感がある女性・男性との性的な経験が少ない女性」とのことで「直接的なエロスを求めている人は少ない」という。むしろ「(人間的に)大切にされる」感覚の提供というものをあす香氏は強調する。男性向け風俗でありがちな「瞬間的な性欲の解消」は女性向け風俗ではあまり求められていないようだ。  また、「SPA White」では月に1回女子会パーティを開催しており、あす香氏を含むセラピスト陣と女性客の交流の場を提供しているという。そこで、10月末日に都内・渋谷区某所のレンタルスペースで開催されたハロウィンパーティに、私も参加させていただいた。 「SPA White」のサービス利用歴有無を問わず、一人参加の方や、さまざまな女性客がいるなかで、始終アットホームでリラックスした雰囲気で開催されたパーティだった。このようなパーティで雰囲気を感じ取ってから利用するか否かを決める、という方もいた。 「他店で本番強要されたりと嫌な思い出があるんですけど、『SPA White』は女性が店長さんだし、こういうパーティもあるから安心です」と語る女性客もいた。このように、店側の透明性・信頼性というのは女性にとって店選びの大切なポイントだと思われる。  これから市場が拡大されるであろう、女性向け風俗店。男性向け風俗とは一味違ったサービス・視点をいかに提供することができるか、という点が成功の秘訣なのではないだろうか。 <取材・文/小高 麻衣子> ロンドン大学東洋アフリカ研究学院人類学・社会学PhD在籍。ジェンダー・メディアという視点からポルノ・スタディーズを推進し、女性の性のあり方について考える若手研究者。
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