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苦闘し続けたミュージシャン・七尾旅人が「メジャーレーベルと2年で決別した理由」

──寂しさは常に感じていたと。 七尾:メジャーにいた2年は本当にそんな気持ちでしたけど、独立してからはいい仲間も増えていったし、自力で前より稼げるようにもなっていったし。やりがいを感じられて楽しかったですよ。 ──自分の活動が目に見える形になったことがよかったわけですね。 七尾:うん。いろんなジャンルの凄い人とひたすら即興演奏したり、チャレンジの毎日。動物とも演奏したよ。地味だと思われていた、弾き語り演奏の概念を変えたいなって、新しいやり方を試行錯誤したり。歌とギターやシンプルな機材だけで壮大な表現ができないかなと。たとえ商業映画みたいに大きな予算がなくとも、手塚治虫先生がペンと紙だけでとてつもない物語を描くように、僕も想像力や情熱で状況を逆転していく方法があるんじゃないかって、常に模索してました。そのひとつの総決算として『兵士A』もありました。 ──弾き語りを始めてから福島や熊本といった被災地や、海外では、ニューヨーク、モザンビークでも歌っていますね。 七尾:そうですね。いろんな土地で、さまざまな人生のあり方を見ることができました。例えば3.11の震災以降、南相馬を定期的に訪ねているのですが、そこで暮らしている方には当然一人ひとり違う思い出や違う見解があって。決して“フクシマ”と記号化されてラベリングされるような一枚岩ではないんです。災害などが起きた後はどうしても人々の声は強さを増し、アジテーション気味になる。南相馬で演奏した時、近所のおばあちゃんたちが設営を手伝ってくれていたんですが、そのなかの一人のご婦人が、「ぼくらのひかり」という原発立地自治体で暮らすある家族の3世代にわたる物語を描いた歌を聴いた後で「私の亭主も原発で働いているのよ。でもほかの奥様方には言えないの」とこっそり教えてくれた。そういう人たちの押し殺したような小さな声の数々が忘れられず、何度も思い出してしまう。 ※12/11発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです 【七尾旅人】 ’79年、高知県生まれのシンガー・ソングライター。’98年にデビュー。特異な発想で日本のインディペンデント・ミュージックシーンを牽引し、今年で音楽活動20周年を迎えた 取材・文/公森直樹 撮影/尾藤能暢
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週刊SPA!12/18号(12/11発売)

表紙の人/ SKE48

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