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無実の強姦罪で恋人が逮捕され…『ビール・ストリートの恋人たち』監督インタビュー

原作と異なるエンディング

――珍しくアフリカ系アメリカ人の女性の視点で描かれていますが、男性である監督にとって女性視点で語ることは難しかったのでは? ビール・ストリートの恋人たちジェンキンス監督:もちろんです。だからこの作品では、女優たちに自由に演じてもらいました。そもそも役者は演じるキャラクターに自分を投影しなければいけないので、彼らがもつ疑問や質問に対しては、監督としてできるだけオープンに対応するようにしています。 ――小説と映画、両方とも曖昧な終わり方ですが、全く異なる曖昧さですよね。映画のラストはどのように決めたのですか? ジェンキンス監督:小説のほうが映画よりも、より曖昧だと思います。小説をそのまま映画化しても、実際に役者が演じると登場人物も原作から少し離れていくんですよね。なので、撮影していくうちに、映画ではもっと希望のある終わり方にしたくなったんです。原作のエンディングにも希望を見出すことができますが、登場人物に関してはそれほど希望が感じられない……。 ――確かに、小説のエンディングは色いろな角度で解釈できます。 ジェンキンス監督:そう、小説は実に様々に解釈できるので、フランクもファニーも死んでしまったという解釈をする人もいるんですが、その形で映画を結んだら、生まれてくる子供には父親も祖父もいなくなり、ティッシュやファニーが希望を失ってしまう。でもそれでは、キキやステファンが息を吹き込んだティッシュとファニーに失礼なんじゃないか――。映画の終わり方は、小説の終わり方を否定しているわけではなく、もう少し希望の方向へ寄せました。 ビール・ストリートの恋人たち

マイノリティの活躍がめざましいハリウッド

――『ムーンライト』はアカデミー賞の歴史を変えましたが、最近では『クレイジー・リッチ』(2018年)や『search/サーチ』(2018年)、『ブラックパンサー』(2018年)などマイノリティをオールキャストにした映画が話題になりました。ハリウッドでのこういったムーブメントに対してどう思いますか? ジェンキンス監督:『search/サーチ』はインド系アメリカ人が監督し、韓国系アメリカ人をキャストに迎えた興味深い映画ですよね。100万ドルの予算でアメリカ国内だけで約2600万ドルもの売り上げを叩き出しました。  これらの作品は数年前なら、「絶対誰も観に行かないよ」と言われてしまったと思います。ところが、この3作品は合わせて22億ドルも世界で稼ぎ出したんですよ! 最高じゃないですか!? なにか素晴らしいことがハリウッドで起こっているとポジティブに考えています。
バリー・ジェンキンス監督

バリー・ジェンキンス監督 ©︎Yoshiyuki Uchibori

――来るアカデミー賞でも助演女優賞、脚色賞、作曲賞と3部門でノミネートされていますが、2017年に『ムーンライト』でオスカーを受賞したことは、作品づくりに影響したりしていますか? ジェンキンス監督:ハハハ、それは全くありませんね。映画作りに対する姿勢にオスカーは全然影響していません。例えば、本作には「白人ってのは、ありゃ悪魔の化身だ」というセリフがありますが、もし本当に映画賞がたくさんが欲しいなら、こんなセリフは絶対に映画に盛り込みませんよ!(笑)。  もちろん、今年度のアカデミー賞で3部門のノミネートを受けたことは光栄だし、『ムーンライト』のオスカー受賞により、「自分が進む道は映画を作ることだ」と実感できたことは嬉しかったですが、映画制作に関しては映画賞は関係ありません。
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映画を作るモチベーションは?
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【タイトル】『ビール・ストリートの恋人たち』
【公開表記】2019年2月22日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
【クレジット】(c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
【配  給】ロングライド
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