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蜷川幸雄・最後の教え子が舞台から映像へと羽ばたく/小劇場美女図鑑

本番直前に役を降ろされる屈辱

「まずはしっかり学べる場で、守りも甘えも捨てきるために、あえて厳しい環境に身を置きたかったんです」  そう覚悟を決めて飛び込んだ蜷川氏の指導は、想像をはるかに超えて苛烈だった。 長内映里香③「ネクスト公演の稽古中は『とりあえず役を決めたけど変わるよ』と言って、本当に変わります。本番中ですら納得いかない芝居をする役者がいると、『慣れてきてダメになるのは、“経験”が出てるからだ』と、すぐに役を変えていました。私自身、数えきれないほど役を変えられ、降ろされたこともあります。  ただ、そうした時に蜷川さんは笑いながらこうも付け加えました。『人生は多事多難だねえ~。キリッと話せるようになれ。日常で物事をキャッチする時に核を掴んでないから、そういう話し方になるんだ。だから、オレには甘く見える。でも、そうした部分はきっと変えられると思うよ。まあ、自己改革には時間が掛かるけどな』。役を降ろされるのは悔しく惨めでしたが、この言葉で救われた気がします」  師弟関係は5年の月日を重ねた。そして、蜷川氏逝去の報を知った翌朝、まだ混乱する頭の中で辛うじて浮かび上がったのは、「あの人がいなくても世界は回るんだ……」という不思議な感情だったという。 「1ヶ月抜け殻でした。丸5年間、蜷川さんの求める事に必死に食らいつき続けていたので。でも蜷川さんが亡くなった今、『ここで変わらなかったらいつ変わるんだ』と、ネクスト・シアターを辞めました。そして、これを機に映像の仕事に集中し、また一から学び直そうと決めました」

日本酒のようににじみ出る存在感のある役者に

 舞台一筋だった彼女にとって、初めて挑戦する映像の世界は戸惑いの連続だった。 「映像の世界では監督の数だけイメージがある。そこに応えるには、これまで培ってきた自分を一度、捨てなくちゃいけない時もあります。舞台とはまた違った対応力や集中力が必要だと思います。でも、その試行錯誤も楽しいですね。だって、常に自分を疑ってその先の可能性を追い求めていかなければ、役者を続ける資格がない。  その意味で、ネクストにいた時より、今の自分は欲深くなっているかもしれません。まだまだ無名で『名は無いけれど時間はある』という状況だからこそ、やれることを見つけて楽しんで取り組むようにしています」  役作りのため坊主にまで刈り上げた頭はベリーショートまで戻り、今年30歳を迎える女優の色気が匂い立つ。お酒も好きで、自宅でウイスキーをよく飲むというが、最近は日本酒にも凝っているとか。 「お米から選ぶようにしています。実家が神戸ということもあり、兵庫の愛山と岡山の雄町が好き。良いお酒にはにじみ出るような存在感がありますよね。そうした味のある役者になるのが目標でもあります。もともと嘘が嫌いで、物事を正直に言うタイプなのですが、芝居では複雑なニュアンスや独特の存在感を表現できるよう、役者として成長していきたいと思います!」  力強く前を向いた長内さん。「台風家族」で役を生きる彼女の姿を、いつか見てみたいと思わずにはいられなかった。 長内映里香④〈取材・文/日刊SPA!取材班 撮影・ヘアメイク・スタイリング/Masayo 撮影協力/新宿『Bar K』〉 【長内映里香】 おさないえりか。’89年、神戸市生まれ。神戸女学院大学卒。大学在学中より蜷川幸雄氏主宰の「さいたまネクスト・シアター」に所属し、現在はavenir所属。4月27日より放送開始の連続ドラマ「坂の途中の家」(WOWOW)に江口恵役で出演。夏にも出演映画の公開が控える。活動の詳細は、ツイッター@osachaaan9とインスタグラムerika_osanaiにて
―[小劇場美女図鑑]―
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