恋愛・結婚

柏市の辺境にあるラブホテルは、中世ヨーロッパの城だった/文筆家・古谷経衡

映像作品のロケ地としても……

 この豪華絢爛を絵にかいたような当物件。さすが「柏の城」を自負するだけあって、これまで数々の映像作品のロケ地として提供されてきた。なぜそれが分かるのかといえば、ホテル側がそのことをでかでかと宣伝しているからである。曰く、当該物件でロケが行われた映像作品は、『あゝ、荒野』(2017年、岸善行監督、菅田将暉主演)、『娼年』(2016年、三浦大輔監督、松坂桃李主演)、『結婚』(2017年、西谷真一監督、ディーンフジオカ主演)の三作である。

ホテルロビー内で喧伝されるロケ地としての“ブルージュ”

 筆者が、この中でも特に注目したのは『娼年』である。というのは当該ホテルのVOD(ビデオオンデマンド)に作品が入っていたということ以上に、監督の三浦氏による作品『愛の渦』(2014年)を鑑賞済みだったことである。『愛の渦』は乱交パーティーを題材にした人物群像で、はっきり言って本当にどうしようもなくつまらない映画であった。  筆者はこれでも物書きとして映画評を複数書いているし、これまで見てきた映画の本数は市井人よりも圧倒的に多い自負がある。映画の良し悪しを見極める審美眼は最低限ある方だとおもっているが、申し訳ないが『愛の渦』は、カストリ以下の低俗なものだったから、同じ監督が、当該物件の212号室で撮影したという『娼年』には否応なく興味がわいた。  結論から言うと、映画『娼年』は大学生・森中領(リョウ・松坂桃李役)がコールボーイとして年上の女性とヤってヤってヤりまくるというお話。なぜヤってヤってヤりまくるのかといえば、主人公・リョウがコールボーイだからであり、コールボーイなのがリョウだからである。はいはい。至極単純な筋だが、童貞がこの映画を見ると脳が爆発しそうなシークエンスが満載で、逆にすがすがしい。画面全体からある種の沈殿物のような、いやらしい自意識が透けて見えるのは本作の原作が石田衣良だからであろう。  ヤってヤってヤりまくる。とにかくヤる。実に単純かつ明瞭な作品だが、過去作品『愛の渦』よりは構成もライティング(照明)技量も向上しており、劇場で公開する映画としては最低限度のマナーをクリアーしているといえる。  本作のロケ地が“ブルージュ”でなければ決して見ようとは思わない手の映画だけに、当物件で撮影が行われたことを考えると極めて深い感動を覚えたのである。  後半は映画雑感になってしまったが、間違いなくホテル“ブルージュ”はお勧めできる物件だ。そうそう、最後に肝心の部屋内部の模様を伝えたい。

ただっぴろい室内

 部屋によっては若干の旧さを感じさせる部分はあるものの、とにかく広い室内が特徴で、上記写真の部屋はおそらく40平米近くの面積があるものと思われる。息抜きに、ひと時の贅沢に。車があればぜひとも柏インターで降りて、この物件を堪能してほしい。

「ラブホテルは不衛生」は昔の偏見

●ラブホテルQ&A Q ラブホテルに入るのって、他人が「行為」をした後だから、清潔感などに抵抗があるのですが…。(45歳、団体職員、♀、富山県) A バカを言いなさい。あなたはクリンリネスという言葉を知らないのですか。クリンリネスとは「衛生的な環境の維持」のことで、この意味では「回転」が命のラブホテルは完ぺきなクリンリネスが実施されています。だってそうでしょう。万が一、他人の精液やら愛液やらがシーツにこびりついていたら、もう二度とそのホテルを利用しないでしょう。そういう意味で、ラブホテルのクリンリネスは徹底されています。 現在、シティホテルやビジネスホテルといった非ラブホでは客室不足により、連泊の場合はクリンリネスを省略するというホテルすらあるのです。それに比べたらラブホの清潔さといったらない。「ラブホテルは汚い、不衛生」という固定観念は、冷戦時代の遺物です。早く捨てなさい。
(ふるやつねひら)1982年生まれ。作家/評論家/令和政治社会問題研究所所長。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。20代後半からネトウヨ陣営の気鋭の論客として執筆活動を展開したが、やがて保守論壇のムラ体質や年功序列に愛想を尽かし、現在は距離を置いている。『愛国商売』(小学館)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)など、著書多数
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