そう語るジュンさんは、キャバクラで働く前は航空会社でグランドスタッフとして働いていた。今回のカネカ騒動についてはこう考えるという。 「航空会社ではアラサーになった頃から、いつ結婚やら出産するか分からない年齢というだけで海外出張から外されるようになったんです。結局、仕事が未熟な若手の女の子が私の業務を担っていくようになってきて、私のようなお局は彼女達のサポートに回される。今もですが、社会は女性躍進と言うくせに組織はいまだに昭和のままで役職を上げてくれないことも多い。それが嫌なら転職しろってことなんでしょうけれど。 　結局、私もそれ以上の昇進が臨めないと思ったので結婚とともに退社しました。女性ですら育児休暇でキャリアダウンしそうな社会なのに、男性でキャリアアップを考えている人がわざわざ育休を取るとは思えないんですよね」 　カネカの報道しかり、男性の育児休暇がキャリアダウンになるのではないかという意見は他にもある。大阪のキャバクラに勤めるスミレさん（仮名・30歳）は、先日妊娠が発覚したばかり。近いうちにコンサル会社勤務の男性と入籍して店を辞めるという。 「つい最近、彼と男性の育休義務とカネカの報道について話したんです。やはり飲み会とかゴルフ接待とか付き合いが多い業種なので、難しいんじゃないかと言っていました。そもそも有給休暇ですら上司は取れと言うけれど、取れるような状態じゃないとも。仮に育休を取ったとしても、社内で変わり者扱いされて弾かれそうとも言っていましたね。 　あと、テレビで育休を承認された男性を見たんですが、たった10日間だったんですよ。そんなGWみたいな短期間で育児の何が分かるというんですか。育児は旅行じゃなくて現実の日常だし。そんな休暇を義務化するぐらいなら、仕事を定時で終わらせて育児早退をしてもらったほうがよっぽど良いと思います。たとえ制度が変わっても、会社自体の意識が変わらない限り意味がないんじゃないですかね？」 　かなり厳しい意見が聞かれた男性の育児休暇問題。数々の子供がいる女性やキャリアの男性を見ているキャバ嬢だからこそ、シビアな目線になるのかもしれない。＜取材・文/カワノアユミ＞ ― シリーズ・キャバ嬢に訊け ―東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。現在は夜の街を取材する傍ら、キャバ嬢たちの恋愛模様を調査する。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』（イーストプレス）が発売中。X（旧Twitter）：＠ayumikawano