ニュース

ディープインパクト、「年200頭の種付けが死期を早めた」批判はまったくの見当違い

種付け料は4000万円まで高騰

 ディープの「死」が、日本の競馬界に与える経済的影響は甚大だ。前出の田端氏が話す。 「ディープが現役を引退したときに組成されたシンジケートは、8500万円×60株で史上最高となる総額51億円に達し、この株を持っていれば年1頭の種付けの権利が与えられます。一方、シンジケートに入っていない場合の種付け料は4000万円(’19年)まで高騰していましたが、この価格は、“関係者以外お断り”の意味合いが強く、敢えてハードルを高く設定していたのでしょう。  とはいえ、現在2番目に種付け料が高いロードカナロアが1500万円、3番目のハーツクライが800万円ですから、4000万円というのは破格です。300万円で一流の種牡馬と言われているので、過去の名馬と比べても、種牡馬としてのディープは次元がまったく違うわけです」  ピーク時には年間250頭ほど種付けしていたことから、その負担が死期を早めたという見方があり、ネット上では「日本の宝をなぜ殺した」といった批判の声も挙がっている。田端氏が続ける。 「ディープが亡くなる2週間ほど前に会ってきましたが、日常生活には支障がない様子でした。ただ、種付けできないほど頸椎に痛みが出ていれば、ストレスで胃潰瘍になり、死んでしまうこともあるので、関係者としては放っておくわけにはいかなかったのでしょう。批判のある手術にしても、数か月前から準備して、米国から手術経験のある獣医も呼んでおり、手術が失敗したから死んでしまったという話ではない」  須田氏も批判は「まったくの見当違い」と切り捨てる。 「高齢の馬に無理に種付けさせたことが負担になったという批判は当たりません。種牡馬の引退は馬によりけりで、20歳を超えても種付けしている馬は普通にいますから。年間250頭ほどの種付けも一年中行っていたわけではなく、繁殖シーズンのみ一日4回ほど行っていた。これが負担になるかについては、競馬関係者の間でも議論が分かれるところです。  ただ、競馬を知らない人に言いたいのは、今回、手術に踏み切り、残念なことに亡くなってしまったが、関係者がディープに対して最善策を模索した結果なので、そこは理解してほしい。周りのスタッフ以上にディープを大事にしてきた人たちはいないわけですから」  週末、’17年のセレクトセールで1億7000万円の値をつけたアルジャンナ(牡・2歳)が初出走するなど、今年も多くのディープ産駒がデビューする。ディープ死すとも、その血は永遠に受け継がれていくのだ。 取材・文/週刊SPA!編集部 写真/産経新聞社 ※週刊SPA!8月6日発売号「今週の顔」より
1
2
週刊SPA!8/13・20合併号(8/6発売)

表紙の人/ 大原優乃

電子雑誌版も発売中!
詳細・購入はこちらから
※バックナンバーもいつでも買って、すぐ読める!
おすすめ記事