「見た目がいい女性客限定ですけど、毎回意味もなくギャーギャー騒いで帰っていくような集団の女性客に話しかけて、親しくなるんです。連絡先を交換するなんて当たり前で、『今日、確か誕生日だったよね？ 店の中で好きな物なんでも持ってっていいよ！』なんてよく言っていました。自分たち店員にも、『店員と客が親しくなるのは大歓迎だから』と、積極的にすすめてきました」 　もうここまでの話でも充分すぎるほどカオスな店だが、とどめにモンスター店長らしいエピソードが出てきた。 「店長には本命の美人婚約者がいて、しょっちゅう店に来てたんですよ。ある日、2人がバックヤードで大喧嘩をはじめて。『もうあんたとなんか別れる！』『そんな、俺とは結婚してくれないのか……？』みたいな。そのうち婚約者が店を飛び出して、店長は号泣（笑）。 　おまけに号泣したままでレジに入ったので、これにはいつもの専門学校の客らがドン引きしていたほどでした。客が引いているのを見て、『すみません、ポイントカードをお持ちかどうか聞いていませんでしたね』と泣きながら言ったので、自分も笑いをこらえるのに必死でした」 　そんなモンスター店長が経営し、客がモンスターだらけのコンビニだが、意外にもまだ繁盛しているのだそうだ。 「自分はもう就職しちゃいましたけど、店長と例の婚約者との結婚式に参列したり、店に遊びにいったり、いまだに交流が続いています。店長は自分勝手な人だとは思うんですけど、人間らしくてなんだか憎めないんですよね。ただ、店員によって態度を変えるのはやめたほうがいいと思いますが。今は当時とは違う、新しいお気に入りの女性店員がいるみたいです」 　客と店長、どちらか一方がモンスターだとまともなほうが苦しむことになるが、お互いがモンスターだと、案外うまくいくのかもしれない。＜取材・文／関圭一＞