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日本の精進料理が、世界のベジタリアンとヴィーガンにぴったり/鴻上尚史

精進料理の「ノット・クール」は?

「大豆を使って、本物の肉のようにしたハンバーガー」なんてのが欧米では定番ですが、精進料理も、いろんな材料を使って「もどき料理」を創る伝統があります。お肉や蒲焼やカツオのたたきに見せる料理です。  これに外国人が魅了されました。バラエティーに富んでいて、なおかつ「ヴィーガン」用というのは奇跡だと感じるのです。  話はちょっと変わるのですが、おいら、思い立って、一週間、夕食だけ「炭水化物を抜く」ということをしました。結果、2キロ、するっと痩せました。すごいなあ、じゃあ、続けようかなと思ったのですが、じつは、炭水化物を抜いた食事のバラエティーというのは本当に少なく、すぐに飽きてしまうのです。  定食屋で「レバニラ炒め」だけ単品で頼んでも、ごはんと一緒に食べる味付けなのでとても濃いとか、コンビニのチキンは毎日は食えないとか、バナナも糖質だから避けた方がいいとか、です。  なので、「ヴィーガン」の人が日本に来て「食べられるものを探して」苦労する気持ちは想像つくのです。「じゃあ、精進料理は世界ではラーメンや寿司以上の需要があるかも!」とスタジオの外国人達に言うと「そう思うけれど、精進料理を創るのは技術がいる。ラーメン職人や寿司職人ほどそれは一般化してない」と残念な表情で言いました。  たしかに、ちょっと修行して「なんちゃってラーメン」「なんちゃってお寿司」を売っているお店は海外にありますが、「なんちゃって精進料理」は無理だろうなあと思います。 「ヴィーガン」の人に「これ、じつはかつおダシ入ってます」とか言うのはシャレになりませんからね。  というわけで、もし、海外で一旗あげたいと思っている人がいたら、これからは「精進料理」の腕をつけることがラーメンより寿司より確実だと思います。その時は、「SHOJIN Cuisine」と名乗るか「Japanese Vegan Cuisine」ですね。  ちなみに、「精進料理」の「ノット・クール」は、一番は「量が少なすぎる」でした。身近で食べられないことが、二番目の「ノット・クール」。コンゴから来た男性は「肉が入ってないこと」と言ってました。
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