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ドラッグストア業界の裏側。マツキヨ合併、生き残れるのは3~4社か

コンビニ業界をしのぐ経済規模が誕生

 ここ数年、ドラッグストア業界は着実に市場規模を拡大し続けている。今年3月、日本チェーンドラッグストア協会が発表した’18年度版「日本のドラッグストア実態調査」によると、全国総売上高は前年比6.2%増の7兆2744億円となり、’17年度の5.5%増を上回る高い伸びを見せている。好調の要因を、経済評論家の加谷珪一氏に聞いた。 「近年、ドラッグストア業界の売上高が着実に伸びている背景には、その特殊な利益構造があります。大手ドラッグストアの多くは、調剤薬局をベースに成長してきたので、利益率の高い医薬品を扱えます。その医薬品から得た利益を飲食料品の安値販売に回すことで規模の拡大を図っているわけです」  たしかに、ドラッグストアの店頭を覗けば一目瞭然。看板の医薬品に加えて化粧品や日用雑貨、酒、ジュース、菓子、おにぎり、パン、冷凍食品など、豊富な品揃えだ。しかも加谷氏によると、ドラッグストアの商品原価率(※医薬品と食品などを含む全体の数値)は、大型スーパーに匹敵する水準なのだとか。 「アクセスや営業時間などの点で多少不便でも、商品の値段を安くしてお客を呼ぶのがスーパーのスタイル。コンビニは、立地もいいしサービスもいいが、値段はほぼ定価。その両者の戦いは、これまではコンビニ優勢で進んできましたが、価格を気にする消費者が今後増えるにつれ、ドラッグストアに安値競争を仕掛けられるとコンビニは苦しい」 ドラッグストア スーパーの市場規模は13兆円、コンビニは10兆円だ。ここからマーケットを奪うことで、ドラッグストア業界には成長余力が十分にあると加谷氏は指摘する。ただし、それも業界各社が戦う土俵に上がれれば……の話だ。 「現状、ドラッグストア業界は、売上高トップのツルハHDでさえ、7716億円。その他の競合他社も4000億~7000億円ぐらいの規模の企業ばかりなので、このままだとコンビニやスーパーなどの巨大企業と戦うには限界があります。売上高が数千億円の企業と1兆円の企業とでは、仕入れ交渉の際のメーカーの態度が百八十度変わりますからね」  また、こうした競合との関係性に加えて、毎年の医療費が40兆円を超える日本の危機的な医療保険財政も、ドラッグストア業界の再編を促しているという。 「今後、薬価や調剤報酬の引き下げは不可避の状況となっています。今は医薬品の収益を使って飲食料品を安く販売できていますが、それも向こう4~5年で正念場を迎えるでしょう。つまり、ドラッグストア各社は、なるべく早いうちにM&Aで規模を拡大して商品調達力を高め、安値販売を維持できる態勢を築いておく必要があるのです」  銀行や自動車業界のように、いずれドラッグストア業界も3~4社に収斂していくだろうというのが、加谷氏の見立てだ。 「日本の消費者はポイントカードをとても好みますが、今後のドラッグストア業界では、激しいポイント還元競争が起きるはず。メーカーとの関係強化を通じて、新しいプライベートブランド(PB)商品の投入も盛んになるでしょう。懸念される点としては、仮に生鮮食品を扱い始めた場合の品質管理や、処方箋の不正防止への対策が大切です」  ドラッグストア戦国時代に、消費者も賢く立ち回ろうではないか。
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巨大チェーン誕生を製薬会社は危惧!?
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