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拳銃をトイレに置き忘れた女性警官がバイトしてた風俗店とおっさん――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第66話>

誰にでも裏の顔がある。ただし馬場を覗いて

 お礼日記を読む、このフレーズに見覚えがある。そうだ、馬場さんは風俗に行った後に風俗嬢が記載するお礼日記をくまなくチェックする男だった。つまり、馬場さんは大阪日本橋の風俗に行ってるだけなのだ。遠距離恋愛してると思ってるのは馬場さんだけで、実際にはお店の女の子に足繁く通っているだけなのだ。  「すいません、その彼女とはいつもどこで会ってデートするんですか?」  「ホテルだけど」  完全にお店だ。純愛じゃねえ。  結局、遠距離恋愛していると思ってるのは馬場さんだけで、いつものように風俗店と客の間柄があるだけだった。  「彼女はいつもこの制服だからな、すぐわかったよ」  そして、馬場さんが足繁く通うこの店が、たまたま女性巡査長が働いていたかもしれないとお報じられたあの店だったわけだ。特徴的な制服だからすぐわかったらしい。なんてことはない、常連だから分かっただけのようだ。  馬場さん、常連なのでこの店にやたら詳しい。  「ここはな、いわゆるホテヘルっていう関西に多い形態でな、店に行って女の子を指名するわけ。その店は雑居ビルの2階にあって、店に入るとすぐに左側に細長い小部屋がある。そこが待合い所だ。金を払って階段降りて外に出るだろ、すると女の子があの制服を着て待っている。そこから手を繋いで歩くんだけど、ちょうどT字路突き当りにある雑居ビルの目の前には何軒かラブホテルがあってな、1分も歩けば到着してしまう。すぐだよ、すぐ。でも俺としてはもっと手を繋いで歩きたいわけよ」  「ちなみに、やけに盗聴や盗撮を警戒していて、待合室にも枕元にスマホ置くなって書いてあるし、プレイ中も置かないように注意される。あまりそういう注意される経験なかったからビックリしたな。この店の特徴なのか、関西の特徴なのか」  「これだけは言っておくけど、俺が恋している女の子はロリ系だからこの女警官ではない。でもこの店はけっこうレベル高い子が多いからおすすめだぞ。この制服もかわいいしな。ちなみにナンバーワンの子はむちゃくちゃ予約取りにくいから心してかかれよ」  本当なのか全然分からないけど、やたら詳しい。ただ、この詳細さはたぶんガチなのだろうと思う。  なぜか、女性巡査長が働いていたとされる風俗店が、たまたま馬場さん行きつけの風俗店だった。それも立川から大阪日本橋という距離を超えた行きつけだ。相変わらず間が悪いのか良いのか計り知れない男だ。  人はだれしも裏の顔を持っている。  警察官でありながら風俗店で働いていた女性も、裏の顔だったのだろう。僕だって、今これを読んでいるあなたにだってきっとある。  ただ、馬場さんだけは、どんなに裏をめくっても風俗好きの顔しかでてこないのかもしれない。両方が裏面のエラーコインみたいな男、それが馬場さんだ。 ロゴ・イラスト/マミヤ狂四郎(@mamiyak46テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。6月29日、本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)を上梓。ブログ「多目的トイレ」 twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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