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第557回 3月1日「働かなくて良くなる=働けなくなる」

・セルフレジの普及速度に驚く。今のところは客がバーコードを読ませる作業が必要だが、次段階の進化は、電子タグの低価格化のタイミングに起きるだろう。 ・電子タグの最低価格は現在10円強と聞くが、大量生産を前提にすればすぐに数円程度まで下がるだろう。使い捨てのタグをすべての商品に付けられればバーコードは要らなくなる。というかレジ自体不要になる。客は店の入口で顔認証を受け、中では棚から欲しいものを勝手にとってそのまま出て行く。出口で商品がスキャンされて、代金は口座から引き落とされる。この形式のお店が増えていくことは間違いない。その後の予想までしておく。たとえば、個人経営のコンビニフランチャイズが激減する。 ・労働環境について、労働者の味方の立場で近視眼的に語りたがる人がとても多い。 「当日配送ノルマに疲弊している宅配便運転手、かわいそう」 「24時間営業を強制されているコンビニ店長、かわいそう」 けれど、労働者の権利を無理やり高めようとすると、結果的に労働者が不利になるという現象までを考えたほうがいい。例えば最低賃金を上げることによって、経営者はできるかぎり労働者を雇用しない努力に走る。走っているのが、現状だ。 ・深刻な労働力不足によって24時間営業の継続に音を上げるコンビニ店長(フランチャイズ加盟店オーナー)が増えている。昨今の風潮から、本部側が24時間営業の強制を続けることは難しくなりつつある。店長たちの主張する時短営業の希望は通るだろう。ミクロな視点でみると彼らは楽になるし、人手不足は解消され、人件費ぶん収益性は上がる。 ・ただしこの流れが、無人店舗のシステム開発に合理性を与えているのだ。人手不足なんだから、仕方ないじゃありませんか。フランチャイズさんはゆっくり休んでてください。ただね、本部は無人店舗のシステムを完成させ、実用していきますよ。直営店はコレで24時間戦えますよ。 ・今後ゆっくりと、フランチャイズ店舗は減るだろう。退職金と貯金で一国一城の主=フランチャイズのオーナーとなれる人は減る。そしてバンドマンや芸人のタマゴがアルバイトして生活費を稼ぐ場所も、消えていく。そういう動きははっきりとは見えない。具体的に特定の店舗が契約を破棄されたりすればニュースになるが、そうではない。例えば時短営業しているフランチャイズ店の近所に突然24時間営業の直営店ができる。そしてフランチャイズ店は商売がなりたたなくなっていく。 ・同じようなことはそこかしこで起きるだろう。宅配便の運転手は自動運転車やドローンに置き換わっていく。本屋やビデオレンタルショップに続いて、銀行や旅行代理業者の支店も消えていく……その業務はネット上でほぼ完結されるようになるから。 ・この動きは水面下で進むものだ。労働者の権利は守られる。ただし経営者は労働者を「雇わない」方策を模索する。それはロボットやAIのテクノロジーによって、かなり果たされるものなのである。ここに起きる労働問題は社会問題にならない。労組も共産党も動かない。なぜなら不当解雇や雇い止めなど目に見える事象は起きないから。ただ、新しい人材を雇わなくなるなるだけだ。 ・数年後また就職氷河期が始まると予想する。それは最も割を食う若者世代の貧困……それも現在とは比較にならないレベルの……問題として浮上してくるだろう。 ・重要なのは、これは良いことだとか悪いことだとかは、議論するべきではないということだ。文明の正当進化の副産物として、受け入れるしかないのである。 ……………………………………………………………………………………………… ※この話題「働かなくて良くなる=働けなくなる」のライブトークVer.はこちらです↓
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。
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