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暗いニュースだけじゃない、コロナ禍で生じた前向きな変化/鴻上尚史

「自助・共助・公助」のうち“公助”はどこまで補償されるのか

 そもそも、災害大国なわけです。  毎年、この国ではどこかの町では体育館に避難している人がいます。  もう何十年も続いている風景です。  いいかげん、「簡易テント、用意しようよ」とか「ホテルに宿泊補助か全額支援しようよ。それが経済を回すことになるし」と言い出す人達が出てこないとおかしいと心底思います。  菅官房長官(本稿執筆時点)は「自助・共助・公助」と仰いましたが、体育館でざこ寝をするのは「自助」でしょう。  そこで避難した人同士助け合い、水や食料を分け合ったり、お互いの身体を心配するのは「共助」でしょう。  そして、ホテルの宿泊代を援助したり、完全にプライベートを守れる簡易テントを体育館に並べるのが「公助」だと思います。  体育館にブルーシートを敷いて、毛布を貸し出すことを何十年も続けることを「公助」と呼ぶのは、災害大国には相応しくないと感じます。

「公助」を求めるのは申し訳ない

 日本人は優しいので、充分な「公助」がなくても、そんなに怒らないのかもしれません。  また「公助」を求めるのは申し訳ないと思ってしまうのでしょう。  朝日新聞によれば、宇和島市で「今回の台風はすごく大きいから」と娘に勧められてホテルに泊まった84歳の女性は、「ぜいたくだと思ったけど、雨風の音が聞こえず、よく眠れた」と答えていました。  コロナによってホテルを含めた分散避難が当たり前になって、ホテルに対する自治体の補助が出るようになれば、ひとつの希望ではないかと思います。ホテル避難は、コロナによって経営難に陥っているホテルに対する振興策になりますからね。  暗いだけじゃくて、コロナで前向きに変わることがあるとホッとします。
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

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