組織の変化にも倒産やリストラの予兆が…
優秀な社員や中核の社員を手厚くもてなし、不良社員と距離を置くのが経営改善の早道。実際、組織編のアンケートを見ると、「希望退職者を募った」(78人)、「人事評価の方法が変わった」(47人)というように、メスを入れる経営者は多いようだ。
「役職者の中にはデジタルに対応できない、得意先の若い感覚についていけない人もいます。彼らは生産性は低いが人件費は高いので、会社は希望退職で整理するという形を取ります。『常に人材募集をしている』(60人)のは、若い人を採用して人件費を下げようという狙いでしょう」(道家氏)
人件費の抑制と並行して起こる現象が、「聞き慣れない部署が増えた」(43人)や「企業コンサルタントを雇いだした」(39人)といった目新しい取り組みだ。従業員側の戸惑いを内藤氏は代弁する。
「倒産間際には、新規事業の展開や整理解雇、あるいは経費圧縮をミッションとする部署が設置されることがあります。従業員には具体的な説明がないままになりがちなので、『何をしているかわからない部』にしか見えません。
企業コンサルに関しては、経営者が第三者のアドバイスを求めている点で、自信のなさの表れ。会社が好調ではないというサインです」
いずれも危機的状態ならではの組織の特徴であり、「給料が減った、出なくなった」(102人)まで行き着く前に、身の振り方を考えるべきだろう。
Q1 見抜けた倒産・リストラの予兆<社員編>300人中(複数回答可)
①優秀な人が辞めていった 142人
②経費の圧縮を厳命された 95人
③社内で不平不満、悪口が横行 85人
④「予算を削れ」など後ろ向きな議題の会議が増えた 66人
⑤上司が常にイライラしていた 60人
⑥経理担当者が退社した 55人
⑥「売り上げろ」が合言葉になった 55人
⑧会議が増えた35人
⑨社員同士の懇親会の廃止 32人
⑩社畜社員が幅を利かせだした 26人
Q2 見抜けた倒産・リストラの予兆<組織編>300人中(複数回答可)
①給料が減った、出なくなった 102人
②希望退職者を募った 78人
③外注への支払いが遅れた 76人
④常に人材募集をしている 60人
⑤給料の支払日が変更になった 53人
⑥人事評価の方法が変わった 47人
⑦聞き慣れない部署や何をしているかわからない部が増えた 43人
⑧企業コンサルタントを雇いだした 39人
⑧外注への支払期間が変わった 39人
⑩経費が認められなくなった 38人
調査期間は8/25~28、対象は過去に倒産および、早期退職などのリストラを実施した会社に勤めた経験のある30~55歳の正社員・契約社員300人(男女)
【事業再生コンサルタント・道家健一氏】
倒産寸前の中小企業を再建する事業再生の専門家。元ノンバンカーで、債権者の回収活動や不動産コンサルティングにも精通する
【特定社会保険労務士・内藤秀和氏】
メーカー入社以来一貫して人事労務に携わる。大手経営コンサルティング会社を経て、’16年に
CSS-consultingを設立
<取材・文/松嶋千春・沼澤典史(清談社) アンケート作成/パイルアップ>
様々なメディア媒体で活躍する編集プロダクション「清談社」所属の編集・ライター。商品検証企画から潜入取材まで幅広く手がける。