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時間は人も馬も変える。麻薬逮捕で3年ぶりに娑婆にでた友人と京都大賞典の話~払い戻しはこちらへ~

■「指先まで冷たくなっているんです」

 成功が続くと品物とカネが周囲に溢れていく。  密輸人や密売人の何割かが同じ過ちを辿るのと同じで、Dもそうなった。気づけば“立派に様子のおかしいやつ”になっていた。  Dには数々のひどいエピソードがあるんだが、とびっきりのやつを思い出した。 「囲まれた。マンションの駐車場に敵が集結してるから、助けにきてくれ!」  そう言われたから慌てて仲間と助けにいったら、夏場だったから日差し除けをフロントガラスにしている車がたくさんあっただけ。 「李さんですか? Dが指先まで冷たくなってるんです!」  オーバードーズしすぎて、やつの女からそんな電話がかかってきたこともあった。  俺の家に泊めていたら、監視カメラが入っているだかの妄想でパソコンを分解されたこともあった。コンセントのカバーもはがされていた。  粉末カフェインで混ぜ物を作ろうと思って本体からその分だけ抜いた時に、何故か全部吸わないといけないような妄想に駆られて全部吸っちゃって倒れたこともあった。  そんなDも、一日一日の大切さを、娑婆に出てからとにかく最近は毎日感じるんだってさ。 「自分に何が出来るかわからないけど、出来るかもしれないことだとしても刑務所の中じゃ出来ないだろ?」  そう言われてまあそれはそうだなと納得した。

■劇的に強くなったキングオブコージ

 馬はどうだろう。  もう経済動物になって長い時が経つ馬。  奥の方まで透き通って見えるあの瞳がいいよ、馬は。  デビューから活躍出来る時間は、数少ない例外はあるが基本的にはどんなに長くても十年ってところ。  そもそも年中胃潰瘍の競走馬が現役期間中を楽しいと思っているのかどうかは別として、二本足で頭でっかちの人間からすると、輝ける時に輝いてほしいってそんな気持ちがあるよ。  博打の駒なんて一見ひどい言い方もあるが、その背中に宿る多くの人々の気持ちが、駒をより美しく磨くのだろう。  水商売の女なんかもそうだけど、売れれば売れるだけなんだか美人になっていくんだよな。わかるこれ?  それはなんたらクリニックのなんとか院長の腕がいいとかそれ以前に、自信は人を変えるってことだよ。  話が脱線してないかって?  それは大丈夫だ。一応原稿料もらってるからそんなミスを俺はしねえ。  この京都大賞典、少しの時間が人を悟らせることがあるように、そして長い時間が人を変えるように。  大きく変わった馬がいる。  それが◎キングオブコージだ。  それまでマイルで毎回出遅れて後方をトコトコ歩いていた馬が、距離を延ばした瞬間一変、ポンポンポンと4連勝で重賞タイトルを手にしてしまった。  しかも勝っていくうちに自信をつけていったようで、2走前の湾岸Sはそれまで接戦だったのがウソのように2馬身半差をつけて圧勝。  前走なんか後方から他馬をごぼう抜き。馬が自信に満ち溢れている。  まさに三国志演義の呉の呂蒙の故事にある「男子、三日会わざれば刮目して見よ」という言葉が当てはまる。
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京都大賞典の気になる対抗馬は?
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