更新日:2020年10月16日 14:58
ライフ

アル中はダメな人なのか?元アル中漫画家まんきつ×ソーシャルワーカー斉藤章佳

精神論で語られがちなアルコール依存症と嘘

――酒気帯び運転で交通事故を起こした元TOKIOの山口達也容疑者。「自分に甘い」「だらしない」といったアルコール依存症の誤解を生むような報道が目立ちました。
斉藤章佳

「孤独感を埋めようとお酒に逃げ始めると依存症は顔を覗かせる」

斉藤:アルコール依存症者に対するイメージ調査(内閣府/2016)を見ても「本人の意志が弱いだけで性格的な問題である」「昼間から仕事にも行かずお酒を飲んでいる」と非常に悪い印象です。 まんきつ:恥ずかしながら私も、日本刀を振り回して流血沙汰といった暴力的なイメージでした。 斉藤:「暴言を吐き、暴力を振るう」「路上で寝ている」などは“アル中イメージ”と呼ばれ、アルコール依存症に対する典型的なスティグマ(負の烙印)。そもそも中毒と依存症はまったく別ものです。 まんきつ:誤解されやすいですね。 斉藤:中毒は一過性の身体症状で、依存症は習慣です。それに今の依存症者は、生活破綻しているようには見えないサラリーマンも多く、“静かなアルコール問題”とも言われています。長年にわたって形成された、偏った“アル中イメージ”は、アルコール依存症への正確な理解の妨げになっています。 まんきつ:「お酒に強い人や飲酒量が少ない人は、アルコール依存症にならない」も誤解ですよね。大量にお酒を浴びて糞尿まで漏らしていた知人に比べたら、私なんてお酒好きで少し飲みすぎちゃったかなって感じだったから、まさかアルコール依存症と診断されるわけがないと思っていました。 斉藤:漫画で描かれていた「完全に誤診だな」というシーンですね。 まんきつ:はい。2度目の診断で「ビール一缶でも自分の意思で飲みたい気持ちを抑えられないなら、それはもう立派な依存症」と診断医に一蹴されました。

アルコール依存症は脳の報酬系の機能不全

まんきつ

「スリップは怖いけど、いろんなところに頼り笑って過ごしています」

斉藤:当の本人が認めないのもこの病気の特徴のひとつ。“否認の病”と言われる所以です。またかつては、再飲酒して病院に戻ってきた患者に対し、「意志が弱い」「反省が足りない」と、精神論で語られた時代があった。ですがそれは、花粉症の人に「くしゃみはダメ」と言い、したら“裏切り者”呼ばわりするのと同じ。アルコール依存症は脳の報酬系の機能不全だから、それは誤った認識です。 まんきつ:叔父がアルコール依存症で亡くなっていて、「遺伝なので一生付き合っていくしかない」と診断医から言われました。遺伝因子と依存症が関係しているのを知らない人は多いんじゃないかな。 斉藤:そうですね。アルコールに限らず依存症は、遺伝的要因、生育環境、心理社会的な要因など、いろいろな要素が重なっています。 まんきつ:父親は祖父から暴力を受け、私も父親からかなり酷い暴力を受けてきました。 斉藤:親からの暴力や虐待が日常化した「機能不全家族」では、子供の自己肯定感は健全に育ちません。実は依存症になりやすいお酒の飲み方があって、心地よい酩酊感を求める飲酒(正の強化)ではなく、自己否定的感情である不安や孤独感、そうした負の感情をお酒で遠ざける(負の強化)。一時的に気分は和らぐが、シラフに戻ると自己嫌悪がより強くなる。それが辛くてまた飲む。これが危険な飲酒習慣に繋がる魔のサイクルです。
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日本には自己責任論が蔓延しているから生きづらい
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文庫『アル中ワンダーランド』

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