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被害総額3億円の詐欺師を成敗。勢いに乗る馬券師の菊花賞予想

■2020年は「無敗の三冠馬」が二頭出る奇跡の年になるか?

 さて、菊花賞。  果たして本当に二週連続で「無敗の三冠馬」が出るのか。  そもそも無敗の三冠牝馬というだけでも史上初の快挙で、それを出したのが家族で営む小さな小さな牧場。 「事実は小説より奇なり」なんて言うけれど、こんなにベタでドラマティックな展開は少年漫画でもなかなかない。  もし俺が編集者だったら、そんな原稿を持ち込んできたやつに怒鳴っちまうかもな。 「お前こんなわかりやすいストーリー誰が読むんだ」ってよ。  やり直してこい馬鹿野郎と言われた漫画家が翌週また編集部に現れる。その原稿には、今度は翌週にさらなる無敗の三冠馬が誕生するストーリーが書かれていた。  今週は簡単に言うとそんな感じなんだ。  こいつは売れないなと判断して、俺なら編集部出入り禁止にするかもな。そんな話が実際にある訳がなさそうだし、リアリティーも感じられない。  だが、それが現実にそうなろうとしているのが今だ。  産まれてからデビューするだけでも大変で、ひとつ勝つのはもっと大変。競馬ってのは、そんな世界。  三歳のクラシックのタイトルなんか牡馬牝馬で三個ずつしかないし、それを約7000頭の同世代の馬で取り合うワケだろ?  そいつを三冠全部コンプリートする。牝馬も牡馬も同時の年にだぜ? おいおいマジかよって思うよな。  三冠馬自体は1941年のセントライトから、シンザン、ミスターシービー、シンボリルドルフ、ナリタブライアン、ディープインパクト、オルフェーヴルと七頭出ているし、十分の一の確率なら別に今年出ても驚けない。  ただ牝馬三冠が出た年に同時に誕生となると、話は変わってくる。もう俺が生きている間には見ることもできなそう。それくらいとてつもないことだ。  菊花賞はコントレイルに死角はあるのかを探すレースになる。  秋華賞のようにコントレイルを頭にしても、人気薄が相手に来る場合もあるし、ここから買ったからって高配当が望めないわけでもない。  だが俺は、それでも別の馬から馬券を買いたいと思う。  グリグリの馬から張ったところで、読者諸兄だって面白くないだろう?  この連載でも天皇賞春の5万馬券、払い戻し500万があった回が一番読まれていたと編集部にも聞いた。  それなら俺は、俺に求められている渾身の予想をここに書く。  それだけだよな。

■コントレイル人気に逆らった30万円の買い目とは?

 じゃあどこから入るかというとまず2頭。  神戸新聞杯でコントレイルより速い上がりで2馬身差に詰め寄ったヴェルトライゼンデ。前走の神戸新聞杯、俺は半信半疑だったんだ。なぜかって、ダービー後に骨折。それが癒えたと思ったら直前に熱を出してローテーションを変更、追い切りが足りない状態だったんだから、誰だって不安になるだろう。  そうしたらどうだよ。内から抜け出してきたコントレイルに対して、大外から一気に伸びてきた。微妙な状態でこれだけの走りを見せられるんだから、当然本番は上積みがある。  騎乗するのは池添謙一。これまで中央の重賞で84勝しているが、そのうち26勝がGIという、常識では測れない勝負強さを持っている。今年も安田記念でグランアレグリアに騎乗し、大本命馬アーモンドアイを鮮やかな手綱捌きで退けた。狙ったレースを確実にモノにする、その姿はさながらスナイパーと言ってもいいだろう。  その黒鹿毛の馬体は、28年前の菊花賞で断然人気に推されたミホノブルボンを差し切って三冠阻止し『刺客』『スナイパー』とまで評されたライスシャワーと重なる部分すらある。  ヴェルトライゼンデも人気だろうって? 穴馬が知りたくてウズウズしている読者の気持ちが俺にも伝わってくるよ。  面白い馬がいる。京都で4戦して1、2、3、1着のディアマンミノルだ。時計は平凡でも、俺が見てほしいのはその中身。この馬、これまでの10戦で出遅れが6回、直線で不利があったレースもある。決してこれまで100%のパフォーマンスを出し切ってきた馬じゃない。  ところが馬も生き物だ。夏休みを挟んで馬が変わってきた。出遅れなくなったんだ。まだ怪しい部分は残っているが、しっかりゲートを決めていいポジションを取れるようになったから、自慢の末脚をしっかり活かせるようになった。  前走高雄特別は不良馬場。決して条件が良かったとは思えず、道中は追い通し。直線も両サイドを馬に挟まれる苦しい展開をしぶとく抜け出してくるあの根性は大一番向き。ここで激走もあるのではないかと思っている。  コントレイルは強い。実力は一枚どころか二、三枚くらい上だ。皐月賞なんて、並の馬だったら内枠で位置取りを悪くした時点で終わり。大嵐の翌日で水分をタップリ含んだ重たい芝で、3コーナーから外をぐるっと回って伸びてくる馬などめったにいるもんじゃない。まぁ、めったにいないから無敗で三冠にリーチを掛けているんだろうがな。  あの重たい皐月賞の芝をこなせている以上、ここ2週雨中の競馬で使い込まれて荒れた今の京都競馬場芝コースを苦にするとは思えない。  敵は自分だろう。以前この馬は右回りだと内にモタれてしまう悪癖を抱えていた。それでも能力で何とかしていたが、今回は右回りの3000m。真っすぐに走れない可能性は頭に入れておいたほうがいい。  加えて怖いのは気性だ。以前から引っかかりそうな気配を見せている馬だから、3000mを持たせるためにこの中間の調整は『静』に徹している。一週前追い切りもいつもより控えめ。最終追い切りなんて、いくら馬場が重かったにしてもGIの大本命馬の最終追い切りとしては異例の軽め調整に終始した。状態は上向きだが、『いつもと違うことをした』、そこに付け入る隙はあると思う。  故障明け、熱発明けのヴェルトライゼンデに先着されてしまった神戸新聞杯組からは、神戸新聞杯4着、ダービーでも5着と大崩れのなかったディープボンド、ヴェルトライゼンデ同様骨折明けだったビターエンダーの上積みを頭に入れるくらいでいいだろう。  評価が難しいのはセントライト記念組だ。2着サトノフラッグ、3着ガロアクリークは春にコントレイルに完敗している馬たち。血統的にも距離延長はそう歓迎とは言えず、抑え評価が妥当なところだろう。  この2頭を相手に逃げ切ったバビットも素質は認めるが、コーナーワークに不安があり、何よりまだ物見が激しく集中力を欠くなど子供っぽい面も目立つ。コーナーが6つになる長距離戦はジョッキーとの折り合いが最も大事になってくるだけに、3000mという距離は歓迎とは言えない。  見直してみたいのは5着だったヴァルコスで、母の父は菊花賞馬。多くの長距離巧者を生み出したダンスインザダークという血統。3000mへの血統適性はセントライト記念の上位3頭をしのぐ。休み明けで仕上がり途上、後ろに置かれてしまう競馬だったことを考えれば、叩いて一変に警戒したい。  別路線組で気になっているのはアリストテレスだ。父エピファネイア、母の父ディープインパクトは共に菊花賞を勝っているという長距離砲で、ここ2戦は連勝。春の反応の鈍さがなくなり、切れる脚を使えるようになってきた。間違いなく春より成長している。  当初は抽選対象で出走できるか分からなかったのだが、それでもここ5年で菊花賞を2勝している名手ルメールを確保し、抽選突破に賭け、見事出走を決めた。こういう『運のある馬』はGIで幾度となく波乱を巻き起こしてきただけに、強運アリストテレスはそれだけでも買い目に加える価値がある。  馬券は⑥ヴェルトライゼンデと①ディアマンミノルがどちらかは連対してくれるという馬券、人気薄ディアマンミノルの方は3着でも高いから三連単でも購入。 馬単⑥←→①③⑨⑭ 8点12万円 馬単①←→③⑨⑭ 6点6万円 ワイド①⑥⑨BOX3点3万円 三連単③=①⑥⑨→①⑤⑥⑧⑨⑩⑭⑱ 42点8.4万円 三連単①⑥⑨→①⑥⑧⑨⑭→③ 12点2.4万円  人気に逆らう形だが、コントレイルにぶっこむよりは面白い約30万円の使い方だと俺自身は納得している。  ダブル三冠馬の誕生で一生物の伝説が見られるのか、それとも夢は現実とはならないのか。  正直に言えば、俺もコントレイルが勝つだろうと思っている。  だが人と同じ列車に乗ったとしても、皆で同じ駅に着くだけだろう。  もちろん終着駅には歓喜が待っているのかもしれないが、それでも俺は切符を破り捨てて、自分自身が思う方向に歩くのさ。  菊の学名であるChrysanthemumは、ギリシア語で黄金の花っていう意味なんだってよ。  人が降りないような駅の、舗装もされていないような道端。  そいつはそんなところに咲いている気がする。  例え今回それが見つからなくても、人生はユーラシア鉄道よりもずっと長い。  裏道を歩いていれば、いつかそれに出会えるかもしれねえじゃねえか。  では読者諸兄の検討を祈る。  peace.
新宿・歌舞伎町を根城にするギャンブラー。競馬競輪、ボートにバカラと賭け事ならなんでもござれ。座右の銘は「給我一個機会,譲我在再一次証明自己」
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