食産業インフラ・イノベーションが日本を救う6

食産業インフラ・イノベーション1 : 水田での畑作を可能とする土地改良

 そんなインフラ・イノベーションの中でも、特に代表的なものが、農業生産のために土地と水のポテンシャルを最大限にまで引き出す土地改良だ。  とりわけ、米消費量の激減を受けて多くの米作農家の存続が難しくなっている今、既存の水田を畑作にも使えるよう改良し、外国から多くを輸入しているたまねぎや飼料作物等を作る取り組みが、今、大きな注目を集めている。  例えば、富山県砺と 波なみ市では広大な水田でのたまねぎ畑利用へ転換する土地改良を成功させている。そもそも「水を貯める」水田を、「排水する」畑に変えていくには、「排水機能の強化」が不可欠だ。  砺波市ではこの点の対処として、国と県の支援の下、排水路の新設や改修、調整池の整備等、排水インフラの強化等を総合的に推進し、83ha(東京ドーム18個分)の水田をたまねぎ畑に活用(水稲・たまねぎを交互に作付けすることで連作障害を回避)することを成功させた。  そして平成28年現在には、約5億円分のたまねぎを出荷している。  あるいは、北海道士し 別べつ市では、825ha(東京ドーム175個分)もの広大な水田農地の土地改良が行われ、その一部では排水インフラの整備等を通して「野菜」や「花き」の栽培が始められている。  なお、この土地改良では、稲作の大規模化のための区画整理も同時に行われ、米の生産性の抜本的向上も図られている。

食産業インフラ・イノベーション2 : 輸入依存農産物のための農地「開拓」

 ただし、農業生産力の増強のためのインフラ・イノベーションにおける最も典型的な取り組みは言うまでもなく「開拓」(荒野を開いて田畑とすること)だ。  そもそも、「瑞穂の国」とも言われるわが国の歴史は水田開拓の歴史そのものだ。開拓によって農業生産力を上げ、それによって人口を増やし、国力を増強させてきたわけだ。  その先人たちのたゆまぬ努力によって、これだけ自給率が低いわが国においても、米だけは99%の自給率を誇るに至っている。  今日においても使い勝手の悪い既存農地の農業生産力をダイナミックに向上させる大きな意味での「開拓」が続けられている。  そして今こそ、その「日本人の開拓」の力を、「輸入農産品」を作り上げるための農地形成に投入するべきなのである。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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