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アハモ月額2980円。ドコモの料金引き下げ、長期的には消費者が不利になる線も

値下げに伴う収益力低下で5G投資減少?

携帯料金 企業努力というよりも、ウルトラC的奇策で格安プランを実現した、というのが加谷氏の見立てだ。すでにこのTOBは成立し、12月25日にドコモは上場廃止となることが決定している。だが、他のキャリアは子会社化に対して今なお反発を強めているという。携帯ジャーナリストの石川温氏が解説する。 「ご存じのとおり、NTTは旧電電公社。グループでほぼすべての市区町村に7200もの局舎を保有し、光ファイバー設備のシェアは75%にのぼります。その設備を他の通信キャリアに広く開放し、公正な競争を実現するためにドコモの分離とNTTの出資比率の引き下げが進められてきたのです。完全子会社化はそれに逆行するような措置なので、反発が起きるのは当然のこと。競争を阻害するリスクも潜んでいます。  5G時代が本格化するなかで5G基地局の整備が進められていますが、そのためにKDDIやソフトバンク、楽天モバイルはNTT東西が敷設している光ファイバー網を借りなくてはなりません。仮にNTT東西が高額なレンタル料を設定したら、キャリアは揃って赤字となるでしょうが、NTTグループ全体ではレンタル収入が増えて黒字を維持できる可能性がある。NTTの影響力がこれまで以上に高まるのです」

寡占化が進めば長期的には再度値上げに向かう可能性も

 利用者からすれば携帯電話料金の引き下げは願ったり叶ったりだが、長期的には不利益を被る可能性も。 「今後、KDDIとソフトバンクがアハモに匹敵する料金プランを打ち出せば、既存ユーザーのプラン乗り換えで収益率が低下するのは必至。そうなれば、各社とも年間数千億単位にのぼる5G投資が削られ、日本は世界的な5G競争に取り残される可能性さえあります。  格安のMVNO(仮想移動体通信事業者)が淘汰されるのも必至。アハモの登場により、大手キャリアは割高で、MVNOは格安というすみ分けがなくなりますから。同価格帯のプランをぶつけられた楽天モバイルも苦戦は避けられません。こうして寡占化が進めば、長期的には再度値上げに向かう可能性もある。政権が代われば料金引き下げ圧力は弱まるからです」(石川氏)  本来、市場の寡占化には待ったがかかるものだが、携帯料金の引き下げは政権の目玉政策なだけに菅首相も黙認状態。利用者からすれば安いにこしたことはないが……安さと引き換えに失うものもありそうだ。
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総務省主導の手数料無料化も寡占化を加速させる材料に
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