僕と僕の係長/でこ彦<第2話>「“おかま”と拒絶され続けた僕の唯一の救い」
近所の雑貨店で先生の誕生日プレゼントを探した。車の中で使えるゴミ箱を買った。蛇腹になっていて折りたためる。しかし、それは自分の部屋で改めて見ると急に子供っぽく見えて、「俺」にはふさわしくないと不安になって渡さなかった。代わりに部屋の本棚に飾ると、そこに藤浪先生がいるみたいで緊張した。ゴミ箱の中には梅野さんからもらった瓶入りの沖縄の砂をしまうことにした。
「僕はおかまではない。なぜなら、梅野さんのことが好きだからである」
一番仲の良かった女子を好きな人と呼ぶことが僕の見つけた解決策だった。
加えてバスケ部にも入部することにした。スポーツで「おかま」が治るかもしれないという期待があった。
当然、治ることはなかった。
視線は藤浪先生を追った。糸原くんは学年の中でもとりわけ背が高かったが、藤浪先生はその比ではなかった。体の厚みもまるで違う。ボールを包み込む手のひらの大きさやシューズの大きさも別格だった。体操服でもジャージでもないシャカシャカの素材のズボンの照りがなまめかしかった。視線の行き着く先は結局股間だ。「俺」のちんこがどのような収まり方をしているのか気になった。ジャンプをするたびにどういう動きをするのか凝視した。
練習後、車座になって振り返りを行うことになっていた。そのときに先生は正座を組んだ。そして毎回合掌した指先を太ももと太ももの隙間に差し込むのだった。「さて、どうでしたか」と話しかけるときに体重を前にかける。それが股を押さえて痛がっているようにも見えた。あの下にはちんこがあると嫌でも思わされた。家で裸になって同じ格好をしてみると、茎と袋がぷっくりとせりあがった。先生の股間を見るが、そういったふくらみは見当たらない。見えないことが探究心をかき立てた。
ちんこの謎と興味は果てず、男子からは試合中にすら無視され、プレイ中に着るゼッケンの名称はギプスなのかビブスなのか最後まで分からず、卒業を迎えた。
卒業前に一度、藤浪先生が家に遊びにきたことがあった。モンスターファームをプレイしに来たのではなく、母が夕食に招待した。元教師の母はこれまでにも若手の先生を呼ぶことがあった。ふたりは同じ大学の教育学部出身という共通点があり、終始僕の知らない話題で盛り上がっていた。食後に父親が記念撮影しようとカメラを持ち出すのもまた恒例だった。
ちゃぶ台を動かしてスペースを作っていると、藤浪先生はいつものように正座をして、膝をぽんと叩いた。
「律くん、ここ、座る?」
おいで、と手を広げていた。ずっと見つめていた先生の股間。その股間の上に座る。思いもよらない提案だった。
突然の受け止めきれないボールに僕はどうすべきか分からず、三脚をセットする親を盗み見、「いい、見とく」と試合放棄して写真にも映らなかった。
両親は反抗期の照れだと解釈したようで何も言わなかった。
むなしかった。ぷっくりと膨らんだちんこの具合を確かめられなかったことがではない。素直に先生に甘えられないことが悲しかった。先生の笑顔より親の言い付けを重要視してしまうことがむなしかった。
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