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日本の学校教育と校則がもたらした、日本経済への大きな損失/鴻上尚史

世界のトップ企業ランクに日本企業は0

 出口さんは、ライフネット生命を始めたビジネスマンですが、今は、立命館APU学長に就任しています。  この本の中で、1989年(平成元年)に世界の(時価総額)トップ企業20社中14社がランクインしていた日本企業は、2019年には0になり、最高はトヨタの39位になっているという現状がまず紹介されています。  さらに、ユニコーン企業と呼ばれる「未上場で評価額が10億ドル以上のベンチャー企業」は、2019年7月末段階で世界に380社あり、そのうちアメリカが200社弱、中国が100社弱で全体の8割を占め、日本はわずか3社だけだというデータも紹介されています。  そして、これらの原因は、つまるところ日本経済が活性化していないからで、その分析と対策が書かれています。  これがじつに面白いです。

日本の学校教育と校則がもたらした弊害とは

 日本の高度成長期は製造業によって牽引されてきたと言います。  製造業の工場モデルに必要とされる特性は、「素直で我慢強く、協調性があって空気が読めて、上司のいうことをよく聞く」人間像です。  製造業が日本経済の中心だった時は、学校教育がこういう人間像を目指したのは、ビジネス的視点ではうなづけるわけです。  が、いまや製造業がGDPに占める割合はおよそ20%、雇用の割合にいたっては17%です。  そして、世界経済は、GAFAを代表とするサービス産業が牽引しているわけです。  いつまでも、「ただ従順な人間像」を作り続けている場合ではない、それは日本経済の大きな損失だと出口さんは言うのです。  ユニコーンを生むキーワードは、「女性・ダイバーシティ・高学歴」だとします。  そして、日本の典型的なビジネスマンの「飯・風呂・寝る」ではなく、これから大切なものは「人・本・旅」だと言うのです。日本の短期暗記主義の学校教育と校則が若者の探究心や創造力を奪ったと思っている僕にはとても有意義な本でした。お勧めです。
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

『週刊SPA!』(扶桑社)好評連載コラムの待望の単行本化 第19弾!2018年1月2・9日合併号〜2020年5月26日号まで、全96本。
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