薪運びのために買った軽トラの魅力は使い勝手のよさだけじゃない!
そもそも入江さんが軽トラを買ったのは、冬場の暖房の主役である薪ストーブ用の薪を運ぶためだった。本当はピックアップトラックが欲しかったそうだが、予算のこともあって最終的に価格の安い軽トラで妥協した。
薪を運んで薪棚にストックする作業では軽トラと充電式運搬車が活躍する
チェーンソーなど薪関連のアイテムはハスクバーナを愛用している。薪割り機などの道具が整然と並ぶ入江さんの秘密基地。チェーンソーは現在、4本所有しているそうだ
しかし、ジャンボを2台乗り継いでみて、改めて軽トラは「奥の深いクルマ」だということがわかってきたという。
「薪狩りでは木を伐採するために山道に入っていくことも多いのですが、軽トラの悪路走破性はそのへんのクロカン車に負けないほどハイレベルです。頑丈なので玉切りにした丸太をガンガン積んでも安心だし、積載能力は驚くほど高い。過去にランクルなどにも乗ってきましたが、個人的にアウトドアでは4WDの軽トラこそが万能だと思います」
14インチのタイヤを履かせて約30㎜車高がアップ。泥よけも4WDの文字入りのものを探して自分で装着した
とかく実用性の高さや使い勝手のよさだけで語られてしまいがちな軽トラだが、この点についても入江さんは異を唱える。
「最近は軽トラにも安全装置が搭載されるようになりましたが、乗用車に比べれば軽トラは構造的にまだまだシンプルなクルマですから、手を加えてスタイリングを自分好みに仕上げたり、運転席回りの装備を使いやすいものに変えたりとカスタマイズしやすいのも魅力です。こうして世界に1台だけの軽トラをつくり上げることで、愛着がどんどん深くなっていきますね」
右側が外気温とキャビン内の温度を示すデジタル温度計。左が12VのUSB電源。ともに入江さんが自分で付けた便利な装備だ
エンジンの回転数を表示するタコメーターを後付け。以前、自動車関連の仕事をしていた経験を生かして自分で取り付けた
音楽にもこだわる入江さんは、スピーカーも6スピーカーに交換。これで長距離のドライブも一段と楽しくなったそうだ
入江さんの軽トラは、リフトアップなど大がかりな改造をしているわけではないが、快適に使うために細部までのちょっとした工夫が満載だ。
しかも、こうした作業の大半を、楽しみながら自分の手で行っている。
質感のある革巻きハンドルだが、キットを買ってきて自分で縫って仕上げたものだ。価格は15,000円ほどだった
シートカバーも革製のものに変更。18,000円。その下にはトノカバー用の余ったカーボンシートを張ってアクセントに
運転席の骨組みに市販の肘掛けを固定して、キャプテンシート風に。これも長時間の運転のときの疲労軽減に役立っている
こんなふうに自由に手を加えられる敷居の低さこそが、もしかすると軽トラの魅力なのかもしれない。改めてそんなことを強く感じさせてくれる素敵な1台だ。
荷台をすっぽりとふさぐこのふたつ折りのトノカバーは、入江さんがイメージ図を描いてつくった一点物だ。
一点物のトノカバー
トノカバーを横から見たところ
アルミ製の枠をプロに頼み、そこにアルミのサンドイッチパネルを自分で張って、裏は防水を考えてしっかりとコーキングしてある。さらにカーボン風のカッティングシートを張ったことで高級感も生まれたという。製作費は約6万円とのことだ。
●車種=ダイハツ ハイゼット トラック ジャンボ●年式=2017年●トランスミッション=5MT●ローギア=○
●駆動方式=パートタイム4WD●デフロック=○●走行距離=20,050㎞
<撮影 早崎太郎>
写真家。20代の頃はJEEPを駆りオフロード三昧の日々。近年様々な軽トラックを撮影するなかで、現代の軽トラの走破性は当時のJEEPにもまったく見劣りしないことに驚愕を覚えつつも、短いホイールベース、低回転トルク重視、ローレンジを備えるモデルがあるなどそのポテンシャルは理に適っていると納得。そして最近は登山にどっぷり浸かる日々を過ごす。
広告建築写真Studio-JEEP
<取材・文 後藤 聡>
軽トラと近代建築とひとり旅を愛するライター。3年前に訪れたスリランカでは、日本の中古車がボディの文字を消すことなくそのままの状態で多数走っているのに驚かされる。どんな“前職”と出会えるのかが、旅の間のひとつの楽しみだった。