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Z世代を牽引する最注目アーティスト・雪下まゆの作品に漂う“不穏さ”の正体

他人に評価されても孤独は減らないまま

雪下まゆ――さまざまな分野で雪下さんを評価する人が増えているなかで、孤独や不安はなくなりましたか? 雪下:孤独への向き合い方自体は変わったと思うのですが、孤独自体が消えることはありません。唯一、生きづらさを描いた本や映画、ラジオに触れているとき、「自分と同じ人がいるんだな」って安心します。基本的に孤独と不安は皆それぞれに持っているものだと思いますから。 ――そういえば、重度のラジオ中毒だと伺いました。 雪下:仕事上、基本的にインドアで、一日中TBSラジオを聴いています。朝8時くらいに起きたら森本毅郎さんの『スタンバイ!』から深夜3時の『JUNK』まで打ち合わせなどがない場合はだいたい聴いています。ずっとラジオ漬けで、今では音楽を流していても、後ろでラジオが流れてないと気が済まないくらい。 ――ラジオにハマったきっかけは? 雪下:最初は友達に勧められて伊集院光さんの『深夜の馬鹿力』を聴いたんです。そうしたら、まず耳に飛び込んできたラジオネームが「老婆の肛門」で「え、ラジオってこんなに自由なんだ!」と衝撃を受けました。下ネタもきわどいネタもなんでも笑いにするパーソナリティやはがき職人のスキルに感動して、どっぷりハマりました。あと、パーソナリティとリスナーが、顔も名前も知らないなかで、番組を通じて深く繋がっている。そんなドライだけど、親密な関係性が居心地がいいんです。 ――社会的な属性や役割から解放された空間だからこそ、居心地がいいのでしょうか。 雪下:そうですね。だから、ラジオ空間と同じように、海外など自分のことを誰も知らない場所で、自分がどんな絵を描くのか興味があります。生まれてから地続きで育まれてきた、たとえば、娘としての自分、友人と会うときの自分、絵描きとしての自分など「役割」がまっさらな場所で、初めて気づかなかったアイデンティティに触れることができるかもしれない。将来の夢はないと言いましたが、その意味で海外で短期間でもいいので暮らしてみることは夢と言えるのかもしれません。

同じことを続けていると、あっという間に埋もれる恐怖

――アイデンティティといえば、SNS上では雪下さんに似た作風のイラストを描く人も増えてきています。ご自身はどう思われていますか? 雪下:私を含めて創作活動をする人たちはみんな誰かに影響を受けているものだし、自分の絵に影響を受けてくれた人がいるのは嬉しいことです。ただ、ネットで「あれ、これ私の絵かな?」と思うような投稿を目にするたびに、「同じことを続けていると、あっという間に埋もれてしまう」という危機感は覚えます。先に進んでいかないとのみ込まれるプレッシャーはありますが、そもそも私自身が今に満足していたり、とどまるつもりがまったくないので大丈夫です。  これまでは身近な日常の刹那を切り取っていたのですが、6月の個展では、もう少し別の作り込んだ切り口を試してみるつもり。これからも型にはまらず、ラジオを聴きながら新しいものを模索し続けていくのだと思います。 【Mayu Yukishita】 ’95年、神奈川県生まれ。主な作品に、東京モード学園CMイラストなど。『犬も食わない』(尾崎世界観・千早茜著)を皮切りに小説の装画・題字も手掛けている。3月16~18日にEsth.展示会、6月20~27日に個展(WATOWA GALLERY)が控える 取材・文/藤村はるな 撮影/北岡稔章 ヘアスタイリング/齋藤将志 ※3/2発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』より
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週刊SPA!3/9号(3/2発売)

表紙の人/ BEYOOOOONDS

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