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ユニクロがウイグル問題で批判される中、CM起用の桑田佳祐は何を思うのか

ユニクロCMに起用された桑田佳祐は何を思うのか?

 さて、この問題でもうひとつ気になることがあります。それはユニクロのCM。今年2月から、国民的歌手である桑田佳祐の往年の名曲が起用され、国民服となったユニクロのブランドイメージのさらなる向上に寄与しているからです。
 ご存知のとおり、桑田佳祐は楽曲の中で政治的なメッセージや権力批判を巧みに盛り込んできました。「ROCK AND ROLL HERO」(2002年)では、アメリカにおんぶにだっこの日本の安全保障政策を批判。ぬるま湯の平和に浸かりきった精神的な堕落を痛烈に歌い上げました。  そして、サザンオールスターズの「ピースとハイライト」(2015年)では日中韓のいがみ合いをストレートな表現で危惧しつつ、平和を望むメッセージを訴えています。これはどこの国のお話なんでしょうね? <都合のいい大義名分(かいしゃく)で 争いを仕掛けて  裸の王様が牛耳る世は…狂気(insane) 20世紀で懲りたはずでしょう?> (詞・桑田佳祐)
 ユーモラスな仕上がりのMVでバランスを取りつつも、編集のされ方や文脈を追うと、要点は“日本が大人になるべき”とのメッセージだったのではないでしょうか。少なくとも、筆者はそう感じました。

政治を風刺してきた桑田佳祐の考えを聞いてみたい

 このように、普段から国際情勢に敏感な桑田佳祐が、目下最も懸念されている中国の人権状況について、“政治的中立”を表明した企業とコラボレーションを展開することを、どう考えたらいいのでしょうか?  確かに、キャンペーンソングに過去の楽曲が使われることは、数ある仕事のひとつに過ぎないという考え方もできるでしょう。ですが、これがレディー・ガガやテイラー・スウィフトだったら、すぐに何らかのメッセージを発表し、然るべき対応を取っていたはずです。ミュージシャンやソングライターである以前に、一市民として求められる態度だとわきまえているからなのですね。  だとすれば、政府の腐敗や社会の弛緩を折に触れて楽曲に託してきた桑田佳祐のウイグル問題に対する見解を知りたいと思うのも無理のないことでしょう。  もっとも、国内の政治状況を風刺しながら、国際的な重大事案に沈黙を保つというのであれば、それは他ならぬ桑田本人が揶揄した“おんぶにだっこ”の安全保障と何ら変わりないのではないでしょうか? いま日本で日本の権力を批判することほど、愉快で安全な娯楽はないのですから。  ボブ・ディランのようなマキャベリストではない桑田佳祐には、何よりも立ち位置という足場が必要なのです。 <文/石黒隆之>
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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