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「リアルな即興性で競い合う公平な大会を作りたかった」日本のバトルシーンの立役者・MC漢×MC正社員のロング対談<ダメリーマン成り上がり道#43>

リアルな即興性で競い合う公平な大会を作りたかった

漢 a.k.a. GAMI

漢 a.k.a. GAMI

――漢さんがUMBを始めたときは、当時のMCバトルの代名詞的大会だったB BOY PARKのMCバトルに対して、「もっとこうしたらいいのに」という気持ちがあったんでしょうか。 漢:「『この大会の優勝者が本当の日本一なのかな』という疑問はもちろんあった。それで実際にB BOY PARKで日本一を獲った俺が、『新しい大会をやろう』って人を集めたら、絶対に人が集まると思ってたし、うずうずしているMCも多かった。あとUMBはエントリーも制限なしで開催した初めての大会だったと思う」 ――今のMCバトルでは「8小節×○本で先攻・後攻が切れ目なく入れ替わる」といったルールが一般化していますが、B BOY PARKのときはそうじゃなかったんですよね。 漢:「お互いに一分ずつフリースタイルする形式だったね」 ――しかも、その一分と一分のあいだに時間が空いちゃって、後攻がより有利になる状況があったそうですね。 漢:「そういうルールはおかしいし、公平じゃないと思ってた。だから俺が作ってきた大会は『いかにMCにとっても公平か』『どれだけリアルな即興性で競い合えるか』という部分を大事にしてる。今のKOKは『MC視点で作るMCのための大会』だから。  これは正社員にも言ったことあるんだけど、戦極は『お客様のための大会』だと思うんだよね。『いい/悪い』の話じゃなくて、MCバトルのエンターテインメント性の部分を広げる大会。そこは俺がやってきた『MCのための大会』と違う。  KOK は『MCが一番いいコンディションで戦える大会』でありたいと思ってるし、実際にMCにはKOKのシステムが好きな人が多い。『一番公平な大会』と思っている人も多いと思う。自分が過去のMCバトルで感じてきた苦痛をどれだけMCに与えずに、グッドコンディションでやらせることを大事にしている大会だね。  あとKOKには『優勝したら3か月はほかの大会に出ないでくれ』という規約もある。その期間は、スターになるためのアフターケアをして、仕事も持ってくるようにする」

「MCファースト」にこだわるKOK

――優勝して、「ハイ、おめでとう」というわけじゃないんですね。 漢:「なぜかといったら、日本一を決める大会のチャンピオンには成功してもらわないと困るから。あと、日本一になった直後に小さい大会で負けられても困るしね。KOKは売れるためのきっかけも作りたいし、プロ意識を高める場にもしたいと思ってる」 正社員:「でもKING OF KINGS 2020で優勝した呂布さん(呂布カルマ)は、普通に別の大会にすぐ出てましたよ?」 漢:呂布さんはもう呂布さんだから。この規約は売れてほしいタイミングの若いコとか、無名のコに対する規約ね。呂布みたいにブランドがあるヤツとか、KOKで一回優勝してるヤツとかは、『もう自分の道が開けているんだから、好きにやれ』って思ってる――そういった部分が大会の独自性に繋がっているのかもしれませんね。 漢:「俺は海外のMCバトルをいろいろ見てきたし、英語はわからないけど大会のシステムの研究もしてきた。それで向こうのやり方もどんどん取り入れた。アカペラバトルは韻踏合組合が日本で初めて取り入れたシステムだけど、あれもアメリカでは普通にやってたものを輸入したものだよね。  ただ、アメリカのMCバトルを見ていても、『これはアメリカだから合うシステムだな』と感じるものもあった。言葉や文化が違うとラップのテンポも時間の割り方も変わるから、細かな部分の調整は、日本にいる俺が思う普通の感覚を重視した。  あとは『どれだけ先攻・後攻が公平になるか』というのも考えた。たとえば『後攻は有利になる面があるから、先攻のヤツがビートを選べるようにしよう』とかは自分がもともと持っていたアイデアです」 ――どこまでもMC視点で大会を作ってきたわけですね。 <構成/古澤誠一郎> 【関連記事】⇒HBOL連載「ダメリーマン成り上がり道」一覧
戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く
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