お金

もう「写ルンです」の会社じゃない。カメラから医療へ…富士フイルムが成功したワケ

富士フィルム

公式HPより

日立との買収は何が強みか

 次に、「メディカルシステム事業」を解説します。  同事業は、医療用の「画像管理システム」で世界シェア首位を誇るなど、画像処理技術に強みを持ちます。フイルム技術の強みがここに表れていますね。  そこにプラスαされたのが、先に述べた、日立製作所の事業買収です。日立の画像診断機器に、富士フイルムの画像処理技術を組み合わせることで、診断機能が高めることができるのです。  つまり、下記のような掛け算でお互いの強みを発揮しているわけです。 「幅広い医療機器」(日立の画像診断買収)×「画像処理技術」(富士フイルムの得意分野)  今後、両社のシナジー効果を創出することができれば、売上・利益の最大化を狙えるでしょう。診断機能が高い製品ラインアップの拡充により、病院への提案力が大幅に向上するのは間違いありません。

カニバってないことに高評価

 また、互いに「カニバっていない」こともこの買収のポイントです。日立の画像診断事業はMRI(磁気共鳴断層撮影装置)やCT(コンピューター断層撮影装置)など幅広い製品群を手がけていましたが、富士フイルムの既存の製品との重複はX線撮影装置や超音波診断装置など少ないのです。  こうした「カニバっていない」買収を市場で評価する声はとても高いです。  今後、富士フイルムのライバルは欧米大手医療機器メーカー、独シーメンス・ヘルシニアーズ、米GEヘルスケア、蘭フィリップスなどが視野に入ってきます。  同社が、トップメーカーになるには欧米勢が牙城を築く先進国市場の攻略や新興国市場への進出が不可欠になります。  写真フィルムから始まり、「ヘルスケアカンパニー」と変貌を遂げた富士フイルム。CMであまり見かけなくなっても、今後は世界の医療現場で富士フイルム旋風が巻き起こっていくことでしょう。
馬渕磨理子

馬渕磨理子

<文/馬渕磨理子>
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
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