Vってなんだろう? って
川上:かなり虐められたり、パワハラも横行していて、揉まれたんですよ。それでしんどくなってる時に渋谷のスクランブル交差点を歩いていたら声を掛けられて、事務所に行ったらそこが芸能系の仕事をしてるって。「今の仕事辛いからやります!」って契約したんですけど、仕事が決まったって連れていってもらったら「じゃあ、脱いでみようか」って。それが結局、AVだったんです(※スカウトしたのは現在の所属事務所とは別の事務所)
峰:それ、どう思いました? 最初から怪しいとか感じなかったんですか?
川上:怪しいと思ったのはギリギリでしたね。「V撮影〇日に決まったよ」ってメールきて、Vってなんだろう?って。
峰:そう! 業界人ってAVのことをVっていうんですよね。アダルトを抜いておけばいいだろ、みたいな。雑過ぎる……。
川上:現場に行ってマジか~とは思ったんですけど、田舎者なので空気乱すの苦手なんで断れなかったです。
峰:でも、ああいう場に芸能の仕事だと思って行って、スタジオまで入っちゃったら断れる子なんていないんじゃないですか。怖いことがあるんじゃないかと思うだろうし。出演強要問題が注目されるようになって、今はだいぶ状況が変わってきたとは思うけど、本人もOKしているし契約書にサインもしているとはいえ、このスカウトの仕方はグレーなのではっていう例は、以前はたくさんありましたよね。
川上:そうそう。私も殺されるんじゃないかと思いましたもん。サービス精神も相当ありましたし、デビュー作見るとわかるんですけど凄いハイテンションで撮ったんですよ。男優さんとの3絡み目で「撮影どう?」って普通のテンションで聞かれて、「たーのしー!」って(笑)。あれは今見たら絶対ヤバい人。でも、私はもともとしんどいときほど笑っちゃうクセがあるんです。うちの父も同じで、おかんに怒られてる時ほどニヤニヤしてるんですよね。それに似ちゃったのかな。
峰:私はしんどいときに限ってエロい声が出ちゃう人なんですよ。マラソン大会でも声が凄くエロくなって「あん、あん」って。真面目にやれって怒られてました(笑)。瓶の堅い蓋を開けるときとかも、全力でやると「あぁ~ん!」って。人前では気を使って普通に「えいっ」ってやるんですが、それだと100%の力が出ないので、結局「あぁ~~あぁ~~~」って。だから、AV撮影も疲れてきた方が盛り上がるタイプでした。
川上:AV、天職じゃないですか(笑)。
峰:そういう意味では合ってたんでしょうね。でも今日、川上さんを初めて見てめっちゃ最近のAV女優は顔も可愛いなぁって思いましたよ。女子アナみたいじゃないですか。昔はけっこうブスな子がいっぱいいたんですよ。
川上:本当に普通の子がデビューしちゃってますよね。頭も心も、ごく一般の。マインズにも外資系OLやってた子、いますもん。私、その子に英会話の学校を紹介してもらいましたよ(笑)
峰:昔はちょっと考えなしじゃないとAVなんか出なかったけど、今は普通より賢いくらいじゃないと上手くやっていけないと思いますよ。同時期(2005年ころ)に活動していた鈴木涼美さんとよく「私たち今なら絶対に企画デビューだよね……ちょいブスだから。パイパイでかいだけで」って話しますもん。ちょいブス巨乳は今も需要はあるでしょうけど、単体はいけませんね。
川上:実は私は、デビュー作が一番売れなかったんですよ。おっぱいもない、イモっぽい田舎っぽい感じで……。その頃は全く垢ぬけてなくて、全く可愛いとは言えない感じで。ただ、そこからウナギ登りになった珍しいパターン。意地とやる気だけで上手いことやってこれました。
峰:今、デビューして何年になるんですか?
川上:来年1月で10周年なんです。まあ、やりきりましたね。もういいやってなりました。
峰:でも、そんなに長くやってる人ってどうやってメンタルを維持してるんですか? しんどくなりません?
川上:プライベートの恋愛は、まあ上手くいかないですよね。仕事のことしか考えてない。常にどうやって売れるか、どうやって作品のクオリティ上げるかを考えてばかり。私の場合は、芝居力を上げることに活路を見出したんですよね。AVってドラマものでもお芝居が凄く上手い作品ってそんなにないから。
峰:私の演技のドヘタさを見て欲しい! 凄いですよ、才能のなさ。ヤバいですよ。監督もあきらめちゃって、噛んだり台詞忘れたりしてても「もういいや、これで」ってなるくらい。だからドラマものとか全然なかったんです。