エンタメ

<純烈物語>後上翔太が初めてヒーローになるための動機 兄貴分役として山本康平が意識したこと<第110回>

後上翔太の兄貴分としての関係性を意識

 現場ではさりげなく後上のそばへいるようにし、撮影外でも時間を共有するうちに何年もつきあってきたかのような気兼ねのない仲となった。メンバーの中で唯一戦隊経験のないというリアルを、ファンタジーへ乗せることでよりリアルに……つまりは“リアルを超えたリアリティー”を描くのが、今作品の肝でもある。  つまり、ヒーローではなかった後上にとっての戦う動機が伝わらなければリアリティーが出ない。そのためには、康助との関係性を見る側へ実感させることが必須となる。 「最初の話し合いの時点で酒井君は『この映画で後上をヒーローにしたい』って言っていましたから、そこがテーマになるのはわかっていて、そのためにどう描くかでした。三井康助と純烈との距離感は後上君とのシーンに集約されるので、そこを伝えなければならない。撮影以外のところでも築いた後上君との関係性が、ごく自然な絵として映ればいいなと思っています」  距離感が命題の一つであることは、メンバー間も同様だったと思われる。FOD番組『純烈ものがたり』も、ドラマにおけるセリフだからこその普段とは違う呼吸による会話となったが、本人役とは日常の自分たちをそのままやればいいのではない。  どこまでが普段の自分で、どこからが役どころとしての自身なのか。通常ならカメラが回った瞬間にチェンジすればいいが、4人はその先も“本人”なのだ。  一例をあげると、純烈の小田井は他の3人に対し“君”づけだが、純ブルーとしては「白川」「後上」と呼ぶ。この方が、年長者であることがスムーズに伝わる。  普段と違った呼び方によって当事者は役どころにおける距離感をつかむ。ファンにはいつも通りの関係性が描かれていると映った上で、それ以外の層にも純烈が純烈として伝わる演技を求められたのだ。

本人役という「役」の大変さ

「純烈さんというグループの本人役は、大変だったでしょう。普段の自分たちとのバランスが難しいのに、できあがった作品を見たらそれをうまく演じていてさすがだなと思いました。より純烈に親近感が湧きやすい作品になったと思います。  完成品を見た時は、自分がやってきたようなヒーローモノにはなっていないけれど、これもアリだなというのが第一印象で。音楽とヒーローが混ざるとこんな感じになるのか。戦隊にもミュージカル的なものを採り入れることはありますけど、純烈さん自らが歌っているので全然違っていて面白かった。笑いが多めというのも通常の戦隊とは違いますし」  今作品が従来の特撮戦隊モノと違ったのは、はじめに純烈というムード歌謡グループありきな点。これまでは恐竜、忍者、車など比較的戦いと結びつきやすいものがモチーフとされてきた中で、歌となると融合させるにあたってのハードルが生じる。  物語における歌の位置づけ、そしてじっさいに映像としてどこに入れてどんなバランスをとるか。これに関しては佛田監督を中心に入念なすり合わせがおこなわれたと思われる。  歌のシーンが映像の流れから脈略なく浮いてしまったら、元も子もない。場面に合った楽曲をセレクトし、リリックを通じた純烈の世界観がスクリーンに描かれる風景とマッチしてこそ、他の戦隊モノとは違う純烈ジャー独自のエンターテインメントとなり得る。  試写を見て、山本はそこに強い手応えを覚えた。「後上君と出口亜梨沙さん(ミステリアスな占い師役)がミュージカルのように歌って踊るシーンの、純烈らしい真面目にフザケている感の面白さね。あれなんて、従来の特撮にはないですから」。
次のページ
ラスボス・小林幸子がスクリーンでどう見えるのか
1
2
3
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。

記事一覧へ