ニュース

ジェネリック医薬品の供給が「不安定」になった理由とは?メーカー幹部からは怒りの声

薬価の強引な引き下げが薬の供給不足を招いた

消えたジェネリック医薬品

’19年、長期間供給停止だった日医工の抗菌薬「セファゾリンナトリウム注射用」

「ここ数年、薬の製造停止や出荷停止、自主回収、出荷調整などの問題はずっと続いていましたが、そこに新型コロナ感染症による需要の変化や輸入薬の製造トラブルが直撃しました。今後、短期で出荷再開できるものもありますが、長期にわたって供給の目途が立たない薬も少なくない。すでに薬局では、薬剤師が医師に同種・同効薬に代えてもらえないかと変更を依頼するケースがかなりあると聞いています」  日本薬剤師会で常任理事を務める有澤賢二氏は、供給が滞っている現状をこう分析する。  だが、なぜ今、このような異常事態が起きているのか? これには、国が半ば強引に推し進めてきた「薬価の切り下げ政策」が大きく関係している。  少子高齢化の影響で社会保障関連予算は年々増大しており、医療費も診療報酬はすでにギリギリまで切り詰められているが、薬価もこの流れを受けて予算削減の格好の標的となっている。  加えて、昨秋の菅政権誕生をきっかけにその締めつけが一段と厳しくなった。菅義偉首相(当時)が昨年10月に行った所信表明演説で、これまで2年に一度だった薬価の改定(事実上の引き下げ)を毎年実施すると表明。これを裏付けるかたちで、今年4月、1万7600品目ある薬のおよそ7割が価格を引き下げられたのだ。  そもそも医師の処方箋が必要な薬の価格は、政府によって事実上“独占的”に決められている。そのため、日本の製薬会社は、長年にわたって薄利多売を強いられてきたと言っても過言ではない。  日本の大手製薬会社10社の研究開発費の平均は1485億円(’17年)だが、これだけのコストをかけてもペイできず、すでに細菌感染症の治療で広く使用されている「セファゾリン」(抗菌剤)など多くのキードラッグが原価割れする事態となったのだ。  薬価切り下げ政策の影響は計り知れない。その最たる例が、世界に後れを取った新型コロナウイルスのワクチン開発と言えよう。「ゲームチェンジャー」として期待されたmRNAワクチンの開発はファイザーやモデルナなど米国の製薬会社が先行したが、実は、かねてより日本の第一三共と東大医科学研究所も共同研究を続けていたのだ。  だが、予算の都合で’18年に予定していた模擬ワクチンの臨床試験は頓挫。今なお開発に至っていないという経緯がある。

製薬業界を巡る不祥事は起きるべくして起きた!

 薬が市場から消えた要因はほかにもある。ここ最近、医薬品業界で頻発している不祥事がそれだ。  昨年12月、睡眠導入剤が誤って混入した「爪水虫の薬」を服用した後に70代の男女2人が死亡。15人が自動車・転倒事故等に遭ったとする事件が起きた。中堅医薬品メーカー・小林化工が製造販売する経口抗真菌剤「イトラコナゾール錠50『MEEK』」を巡るこの事件は、当時大きく報じられたが、同社の若い社員が夜中に「ワンオペ」で作業していたところ、同じ棚の睡眠薬の原料を誤って混入させてしまったことが原因だった。  医薬品の製造管理と品質管理に関する基準(GMP)に照らすと、この薬の製造は原則2人で行うことが明記されているため、明らかなルール違反に当たる。だが、この事件は見方を変えると、経費削減でギリギリまで追い詰められた製薬業界で、起きるべくして起きた“悲劇”とも言えるのだ。  小林化工の小林広幸元社長は、事件を受けて開いた会見でこんな悲痛な胸の内を吐露している。 「今は、製造販売を中止するという判断をすべきだったと考えている。当時は、医療用医薬品は患者の生命に直結する、市場から一気に500品目の供給を止めるということはできないと判断をした」  つくっても、つくっても儲けは出ない。だが、薬を安定供給しなければ多くの人の生命にも関わる事態になる……。製薬会社としての社会的責任を全うしようとするあまり、やむなく「ワンオペ」の作業を黙認してきた苦渋の思いが垣間見えるのではないか。  立ち入り検査の結果、183品目が別の工場で製造する等、承認書通りの製造が行われていなかったことも判明。福井県は合計12品目の承認を取り消し、116日間の業務停止処分と業務改善命令を通達した。  だが、製薬会社を巡る不祥事はこれにとどまらない。下記をご覧いただければ、医薬品業界がいかに追い詰められているかが一目瞭然だろう。
次のページ
製薬会社を巡る不祥事
1
2
3
テキスト アフェリエイト
Cxenseレコメンドウィジェット
Pianoアノニマスアンケート
おすすめ記事
おすすめ記事
Cxense媒体横断誘導枠
余白