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ロシアのウクライナ侵攻の陰にある“サイバー戦”という脅威

情報空間(サイバー空間)での活動を活発化

サイバー空間 ロシア 2007年2月には、プーチン大統領がミュンヘンの国際安全保障会議において、米国によるミサイル防衛システムの東欧配備計画に対し、強烈に反発して以降、2008年8月にはグルジア紛争で軍事力を行使するなど、欧米の政策や行動に対し強硬な対応をとる政策に転じていた。  そのような安全保障環境の変化に伴い、ロシアは近年、物理的な軍事力の行使のみならず、非軍事手段の重要性に目を向け、とくに、情報空間(サイバー空間)での活動を活発化させている。同空間においては、2007年の「エストニアの重要インフラへのサイバー攻撃事例」、2008年の「グルジア(ジョージア)紛争時のサイバー攻撃事例」、2014年の「クリミア併合時に行われた情報操作・サイバー攻撃事例」および2016年の「米大統領選時のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)による介入事例」など、ロシアの関与が疑われている事例が多数生起している。  その各々は、「国家機能を麻痺させた初の事例」「軍事行動とサイバー攻撃とを同時に行った初の事例」「初めて実行されたハイブリッド戦」「SNSプロパガンダを利用した初の対 外的な選挙介入による情報操作事例」など「○○初」の集まりともいうべき事例であった。 これだけ複数の事例が積み重なると、ロシアは情報空間(サイバー空間)において、何を目指そうとしているのかといった疑問が生じてくる。また、ロシアは同空間を単なるインフラ・公共財と位置付けているのか、新たな戦争・紛争の領域と位置付けているのかなどの疑問も生じてくる。

ハイブリッド戦を仕掛けるロシア軍とは

 ロシアは近年、情報空間(サイバー空間)において様々な活動を行っている。過去20年間で実行動として、顕著な活動として最初に認められたのは、2007年のエストニアに対する大規模サイバー攻撃である。この事例は、エストニア政府が首都タリン中心部にあった旧ソ連軍をたたえる像をロシア側との調整もなく郊外に移設したことに端を発している。これに激怒したロシア国民がエストニア政府の重要機関のホームページに大規模なDDoS攻撃(分散型サービス拒否攻撃:対象のサーバーシステムに複数のコンピュータから過剰なアクセスを行い、機能不全にするサイバー攻撃)を行ったことにより、高度に電子化されたエストニア政府の重要インフラが麻痺してしまった。ロシア国民が自発的に実施したとの立場をロシア政府は採っているが、政府機関が扇動して行ったとの見方が多数派である。  翌2008年には、グルジア(ジョージア)紛争が生起した。この際、物理的な軍事侵攻と同時にサイバー攻撃が行われ、グルジア軍はロシアによるサイバー攻撃で軍事指揮系統が大混乱に陥り、容易にロシアの軍事作戦の成功を許してしまったことも確認されている。  さらに2009年には、こんな事例も起きている。2001年9月11日の米国における同時多発テロ発生以降、米国はキルギスに軍隊を駐留したが、同軍の撤退をめぐって、キルギス政府と対立状態にあったロシアがキルギスにサイバー攻撃を行っている。これによりキルギス国内の通信インフラに大きな影響があり、それに依拠している駐留米軍の指揮通信も一時使用不能となるという多大な影響が起こった。
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ハイブリッド戦を具現化したウクライナ危機(クリミア併合)
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近未来戦の核心サイバー戦――情報大国ロシアの全貌

大国ロシアをベースに「サイバー戦」の全貌を元在ロシア防衛駐在官がひもとく!

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