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人手不足で「40代がいない!」は本当なのか? 転職エージェントの本音

若手が活躍するベンチャーが40代を欲しがるワケ

 こうした大手企業だけでなく、若手が活躍するイメージの強いベンチャー起業でも40代不足は深刻だという。あるネット系広告代理店のベンチャー起業の幹部に話を聞いた。 「ウチの会社は社長含め幹部5人で15年前に立ち上げたんです。設立メンバーはその当時みんな30代だったので、自分たちよりも年上の方はほとんど採用に応募してきません。ベンチャーは若いコは集まるので、気がついたら幹部以下は20〜30代前半の社員といういびつな年齢構成になっていました。こうしたベンチャーは多く、経験があってマネジメントができるベテランがいないと嘆く声は多いんです」  とはいえ、条件面、待遇面では大手には敵わない。そこで思い切ってこの会社では採用基準を見直したところ、人材確保に成功したという。 「まず、完全に実績重視で副業もOK。フリーランスや自営している方の応募も歓迎としたところ、そういった層からの応募がかなり増えました。しかし、実際に入社した後、最初は自分よりもかなり年下の上司の下で働くこともある点が社内では不安視されていましたので、他の年代の採用よりも面接の回数を増やしました。コロナ禍ではありますが、面接も基本的にリアルで行い、会社に来てもらって若いコたちだらけの環境で一緒に仕事ができるのかを重視して採用しましたね」  その結果、40代後半管理職を2人採用することができたという。 「一人親方的に自営されている方と業務委託で働いているフリーランスの方を採用することになりました。さもすると自分の子供と同い年の部下、上司と仕事をしているのですが、2人とも人を立てるのがうまいんです。それと、百戦錬磨の経験と広い人脈は非常に重宝していますね。今までウチの会社になかった知見を共有できたことはかなり大きいです。イイお父さん的な存在として若いコたちとも仲良くやってもらってます」

虫が良すぎる企業体質を変える必要

 とはいえ、こうした企業はまだまだ少数だ。ほとんどの会社は数年先を見越した人材教育と採用を主眼に置く人材戦略が主流である。先述の転職エージェントの担当者はこうした人材戦略について、懐疑的な見方をする。 「大手企業になればなるほど終身雇用、永年勤続を前提に人材戦略を考えている傾向にあります。どれだけ若い社員に心血を注いで育てても、やっぱり若いコは辞めるんです。こんなに育ててやったのに、お前はその恩を……なんて浪花節は若いコじゃなくても通用しない時代ですから。そんなに辞めずに働いて欲しいなら待遇や職場環境を整えるべきですし、人が欲しいなら採用基準も見直せばいいんです」  40代足りない問題はこの先、どうなるのだろうか。このエージェントは「そもそも自分たちで採用を控えておいて、今になって採用を控えた年代が足りないなんて虫が良すぎますよね」と最後に付け加えた。 取材・文/谷本ススム
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター
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