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「私は精神的に殺された」自称ピアニストの結婚詐欺師に被害女性が怒りの告白

血液検査は正常、年齢も10歳以上違う

生年月日がウソであることに気付いた河野孝典被告の血液検査結果報告書(A子さん提供)

 そんなA子さんがついに不信感を持ったのは、河野被告の血液検査の結果報告書に書かれた生年月日を偶然見たことだった。 「聞いていた年齢と10歳以上も違う…」  血液検査の数値もおよそ正常でしかない。こうなると結婚の誠意どころか、その正体までも疑わしくなり、知人を介して警察に相談した。その結果、複数の累犯前科を持つ詐欺師であることが判明。河野被告はA子さんから治療費の名目で35万円を騙し取ったという詐欺容疑で逮捕された。  河野被告は容疑を認めたが、「数え切れないほどのウソをつき、詳細は覚えていない。1000万円以上はあると思うが、600万円以降は覚えていない。騙し取った金はほとんど飲み代に使い、治療費に使った金は1円もない」などと供述した。  捜査当局がLINEの履歴などから立証し、犯行が裏付けられたのは合計777万3000円分だけだった。

A子さんの告白「懲役4年半は軽すぎる」

 A子さんが言う。 「私は、それまでの河野との交際がすべてウソで塗り固められていたのだと知ったとき、気が狂いそうになるほどの悔しさや怒り、憎しみが込み上げました。これまで婚約者だと信じていて、自分の夢を応援してくれていると思っていた人が、本当は凶悪な詐欺師であったということや、これまで自分が河野の思うままに“洗脳”されていたのだということを知り、身体の震えが止まらなくなりました。事件のことを友人や職場の人間にも知られ、いっそ殺してほしいと思うほどの辱めも受けました。自分の居場所を見失い、築き上げてきたキャリアやプライドを傷つけられ、社会的な立場も失いました。私は、この事件によってうつ病を発症し、何度も自殺未遂をしています。私は河野に“精神的に殺された”のです。心に刻まれた恐怖心は、そう簡単に癒えるものではありません」  内妻は詐欺の共犯として捕まることもなく、事件後は海外に渡ったという。A子さんは精神をボロボロにされながらも、詐欺罪の厳罰化を目指して署名を集めたり、声を震わせながら法廷で意見陳述した。 「こうして真面目に被害を訴えたところで、被害者がただ苦しむだけなのだと今回の一件で思い知りました。だから被害者は皆、泣き寝入りをするしかないのです。時間や心の負担や労力やお金もこれ以上失わなくて済む、自分を傷つけない最善の方法ですから。今の日本の法律は被害者に厳しく、加害者にとても優しい。『詐欺大国日本』は、詐欺罪に対する罰則を重くしない限り、その汚名を返上することはできません。私は、日本というこの国の弱さと甘さに絶望しました。このままでは自殺者が増える一方です。私は精神障害者となり、普通の生活を送れない身にさせられました。  精神障害はたった数年で完治とはいかず、一生治らない場合もあるのです。それでも詐欺罪の犯人はたったの数年で自由の身になれてしまうのです。意見陳述を行うに際して、私は正しく皆様に被害を訴えるべくとんでもなく努力をしました。しかし、これだけ私が頑張って訴えても、たった4年半の実刑判決。誰が聞いても酷い事件だと分かる、誰が聞いても数年で釈放されればまた被害が増えるだけだと分かる、そんな事件なのに何故、何故。納得のいかないことだらけです」(A子さん)  偽りの自分を演じ、本来なら鼻も引っかけられないような相手から、心と体とカネを奪うのだから、結婚詐欺師は性犯罪者といっても言い過ぎではない。人の人生をメチャクチャにしておいて、詐欺罪の上限が10年以下の懲役というのは甘すぎるのかもしれない。<取材・文/諸岡宏樹>
ノンフィクションライター。1969年生まれ。三重県出身。週刊各誌で執筆。著書に『実録 性犯罪ファイル 猟奇事件編』『実録 女の性犯罪事件簿』。別名義でマンガ原作も多数手がける
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