拒否反応を示した人の多くは、国内事情に照らし合わせて不可解だと感じているようでした。では、食用コオロギの導入を検討しているのは日本だけなのでしょうか?
これは明らかに違います。確かに日本に限れば人口は減少傾向ですが、インドやアフリカなどの新興国を中心に世界的にはまだ増加の一途をたどっている。安定的な食糧供給は喫緊の課題です。
特に問題となるのがタンパク質。地球上の全人口に必要な分をあまねく摂取させることを考えた場合、家畜だけでまかなえるのかというと大変に厳しい。家畜を育てるには植物由来のエサが必要です。それも1カロリーを供給できるニワトリを育てるには9カロリーほどの植物を与えなければなりません。(『Effective Altruism』What role might insects play as part of the future food? より)
つまり、地球上の全人口が動物の肉を食べようとしたら、同時にその9倍ほどの植物も育てなければならないわけです。その植物を育て、収穫するために使用されるエネルギーも考えると、地球に相当な負荷がかかっていることが想像できるのではないでしょうか。
駆除されていた昆虫が新たなタンパク源として注目
そこで昆虫食が研究されるようになったのですね。家畜のエサとなる植物を育てる際に害虫として駆除されていた昆虫には、食肉をしのぐタンパク質やミネラルを含むものもあるのだそう。
それを食べるようになれば、家畜、植物の消費が相対的に減ることになり、ひいては収穫や畜産にかかるエネルギー量もセーブできる。好循環のキーになると考えられているのです。
つまり、堀江貴文氏の言う「コオロギ食に正義なんか何一つ1ミリもないです」とか、“どうせ利権絡みでしょ”という小倉優子の心配とは全く逆。そんなちっぽけな話ではありません。
このままでは地球がもたない、未来の人類に申し訳が立たない。いま何かしなければ手遅れになってしまうとの徳義心が原動力です。
<我々の食べ方が持続可能でなく、根本から考え方を変えなければ地球上の半分は肥満であふれかえり、もう半分は水没してしまうと気づいている人たちにとっては明白な事実だろう。>(『The Guardian』 If we want to save the planet, the future of food is insects 2021年5月8日 筆者訳)
昆虫食はおおむね正義から生まれたアイデアだと考えて差し支えありません。しかしながら、各国が一斉に大きな変革に向けて動き出す様子を懸念する向きがあるのも確かです。そもそも一体いつどこでそんな話が決まったのだろう?と。