更新日:2023年05月19日 14:11
ライフ

アメリカと日本でこんなに違う子育て事情。「日本の少子化は必然」と感じる理由

夫婦で育児参加できる働きやすい社会に

公園

地元の子どもたちが多く集う公園。平日夕方でも、父親らしき男性の姿が目立つ

 日本で共働き世帯が増えているのに、旧態依然とした残業文化が残っていては、子育てもままならない。そもそも、プライベートを充実させる余裕がなければ、出会いは生まれず、恋愛も結婚もできない。まるで、就職氷河期世代の非婚化、晩婚化の呪いがまだ続いているかのようだ。  アメリカではどうか? 少なくともアメリカには、日本と違って「残業する/しない」の選択肢がある。  ハイキャリアを目指す場合は裁量となるので別だが、アメリカでは基本的に時給制。アメリカ人にしてみたら、お金ももらえないのに上司や同僚につき合い、サービス残業をする意味がわからない。個々の業務が明確に決まっているため、残業しないと終わらないというのは「仕事が遅いのでは?」「時間管理能力がない?」と、日本とは逆にマイナス評価につながる。みんな定時でさっさと帰り、不要な飲み会などのつき合いもなし。急ぎの仕事があったとしても、オフィスに残るより、家に持ち帰ることが好まれるようだ。  職種にもよるが、勤務時間もフレキシブル。週40時間働く場合、1日10時間働いて週4日勤務、週休3日にしたり、夜明け前から働いて昼終わりに調整できたりする。パンデミック以降、リモート勤務を継続させる企業も増えており、時間のみならず、場所にもとらわれない働き方が可能になっている。年間の決まった祝日こそ少ないが、有給休暇は比較的取りやすく、出産・育児や子どもの学校の休暇に合わせて取得する人もいる。  残業がなく、いつでも気軽に会社を休めると、生活がどう変化するか想像してみて欲しい。家族みんなで食事をして、独身者は恋人とデートを楽しむこともできる。子どものお迎えや習い事にも間に合うし、夫婦ともに育児参加が可能。片方にだけ負担がかかることがなくなると、気持ちに余裕が出て、夫婦仲も良くなりそうだ。  何より、日本で女性が産後もキャリアを犠牲にしない働き方を実現できれば、結婚や出産へのネガティブなイメージが薄らぎ、産む意欲が湧くかもしれない。ダブルインカムにより経済面も潤う。企業は雇用損失を防ぐことができ、政府にとっても税収アップにつながるだろう。  ちなみに、妊娠・出産・育休などを理由とする、労働者にとって意に沿わない差別的な解雇・雇い止め・降格・減給・配置転換は、日本でもアメリカでも「違法」である。

日本は子連れに対して厳しすぎる

 近年、子連れに対しての風当たりの強さが目立つ日本。少子化の今、子育て世帯は少数派であり、独身者や高齢者が多数派となっていることも理由のひとつかもしれない。つまり、日本お得意の同調圧力により、利害の一致する独身者や高齢者の暮らしやすい環境が優先され、それを乱す子連れは「けしからん」と批判の対象になっていくのだ。  保育所の待機児童問題にしても、平日昼間の学校行事やPTA活動にしても、そのつらさや負担感は経験してみないとわかりづらい。独身者はもちろん、専業主婦、多世帯での同居が当たり前だった高度経済成長時代を過ごした高齢者にとっても想像しにくいのだろう。だからと言って、政府までが一緒に思考停止して良いわけでもないはずだ。  日本では公共交通機関の乗車時におけるベビーカー使用に苦情があると知り、ひどくガッカリした。アメリカと違い、子連れでのカフェ利用にも気兼ねする不寛容な世の中で、若者は家庭を持って子育てをしたいと思えるだろうか。一体、親はどこで息抜きをすれば良いのか。一方、働いていなくても、リフレッシュ目的でベビーシッターや一時保育を利用できるよう支援する地方自治体が日本全国に増えているのはうれしいニュースだ。
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子育てしたくなる環境作りも大切
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アメリカ・シアトル在住。エディター歴20年以上。現地の日系タウン誌編集長職に10年以上。日米のメディアでライフスタイル、トレンド、アート、グルメ、カルチャー、旅、観光、歴史、バイリンガル育児、インタビュー、コミック/イラストエッセイなど、多数の記事を執筆・寄稿する傍ら、米企業ウェブサイトを中心に翻訳・コピーライティング業にも従事。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員

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