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動物学者&コピーライターの双子姉妹、「幻の動物」ユキヒョウの撮影に成功

ユキヒョウの痕跡を探し、赤外線カメラを設置

斜めに立っていて、いかにもユキヒョウが爪研ぎしやすそうな木。記念すべき1台目の赤外線カメラを、太い幹にくくり付けた。©︎twinstrust

斜めに立っていて、いかにもユキヒョウが爪研ぎしやすそうな木。記念すべき1台目の赤外線カメラを、太い幹にくくり付けた。©︎twinstrust

 次の日から、姉妹はユキヒョウの生息地に赤外線カメラを仕掛けに行った。宿泊しているゲルからジープで1時間ほど、そこから先はゴツゴツした岩が増えて、もうジープでは通れないので徒歩で入って行く。  ユキヒョウは行動範囲が広く、警戒心がとても強いため、直接観察するのは難しい。そのため、動物が前を横切ると自動でシャッターが下りる赤外線カメラが有用なのだという。しかし、当てずっぽうで仕掛けるわけではない。 「尿スプレー(尿によるマーキング)や爪とぎの跡、糞などの痕跡を探しながら歩いていきます。私たちは1時間半ほど歩いた場所でユキヒョウの爪とぎ跡が残っていた木を見つけ、そこに1台目の赤外線カメラを設置しました。気温はマイナス20~10℃。手足の感覚がなくなるほど寒かったのですが、『ユキヒョウがまたここに戻ってくる』と思うと、心が温かくなりました。 『ユキヒョウならここの道を通るだろう、ここでマーキングをするだろう、ここで昼寝したくなるかも……』と動物園でユキヒョウを観察してきた経験を頼りに歩き続けました。痕跡を発見するたびに『姿は見えないけど、本当に野生のユキヒョウがいる!』と、言い表せないほどのうれしさがこみ上げてきました」(こづえさん)

赤外線カメラによる初のユキヒョウ撮影は大成功

マーキング跡に設置した赤外線カメラの写真。奥にいる母親に倣って3 頭の仔たちも口を開いて匂いを嗅ぐ仕草(フレーメン)をして、情報を収集している。©︎twinstrust

マーキング跡に設置した赤外線カメラの写真。奥にいる母親に倣って3頭の仔たちも口を開いて匂いを嗅ぐ仕草(フレーメン)をして、情報を収集している。©︎twinstrust

 ユキヒョウの痕跡をもとに、無事に8つのカメラを仕掛けることができ、11日間の調査を終えて姉妹は帰国。その8月後、モンゴルから赤外線カメラの写真と映像が届いた。 「結果は大成功でした。いちばんの成果は、ユキヒョウ親仔の姿を捉えられたことでした。ユキヒョウは単独生活を営む動物なんですが、生後20~22か月くらいまでは母親と一緒に行動します。赤外線カメラに写っていたのは、母親と生後3か月くらいの仔どもたち3頭。その近くに設置した別のカメラには雄らしき個体も写っていました。  ユキヒョウの行動圏は20~1000㎢と広く、狭い範囲にこれだけの数のユキヒョウがくらしているということは、それだけ餌となる動物が豊富だということも示しています。  親仔のユキヒョウは、口を開けて笑ったような表情で臭いをかぐ様子(フレーメン行動)も見せてくれていました。母親がマーキング跡の匂いを嗅いで、仔どもたちがそれを真似るように懸命に匂いを嗅いでいました。  また、ほかの赤外線カメラには、カメラに近づいたユキヒョウのドアップ顔写真や、カメラが気になって手をかけて揺らす映像なども撮れていました。ユキヒョウは好奇心旺盛な動物のようです」(こづえさん)
爪研ぎ跡のある木に仕掛けた赤外線カメラに写っていたユキヒョウのドアップ写真。©︎twinstrust

爪研ぎ跡のある木に仕掛けた赤外線カメラに写っていたユキヒョウのドアップ写真。©︎twinstrust

 こうして期待以上の結果を出すことができた姉妹は、撮れた映像や写真を支援者たちに還元した。さらに、ユキヒョウを飼育していた協力動物園(7園館)では、撮れた映像を使った教育展示についても積極的に協力してくれた。 「野生と動物園との架け橋になれたら……」。初のフィールドワークを終えて、姉妹のユキヒョウに対する想いはより一層強くなっていった。 【ユキヒョウとは】 哺乳綱食肉目ネコ科ヒョウ属に分類。学名はPanthera uncia。ロシア・中央アジアから南アジアにかけての12か国に生息し、世界で一番高いところにくらすネコ科動物。生息数は不明だが多くても推定8000頭未満とされ絶滅の危機に瀕している。寸胴な体型と長い尻尾を活かして、岩山の高低差を利用した狩りでブルーシープなどの餌動物を捕える。雪山に適応して毛が長く、足裏までぎっしり生えている。冬に交尾し、春に1~3頭程度を出産。22か月ほどの長い育仔期間をもつ。日本では9つの動物園で観ることができる(2023年3月現在)。 ユキヒョウの生息地域
双子の姉・木下こづえさん(左)、妹の木下さとみさん(右)©︎twinstrust

双子の姉・木下こづえさん(左)、妹の木下さとみさん(右)。©︎twinstrust

【ユキヒョウ姉妹(木下こづえ・木下さとみ)】 双子姉妹の姉・こづえさんは京都大学野生動物研究センター助教(2023年4月より同大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授)、保全・繁殖生理を専門とする野生動物研究者。妹のさとみさんは広告会社の電通でコピーライターをつとめる。姉妹の専門性を活かした任意団体「twinstrust」を設立、ユキヒョウの魅力を伝え保全活動を行う「まもろうPROJECT ユキヒョウ」を立ち上げた。4月18日に『幻のユキヒョウ 双子姉妹の標高4000m冒険記』(扶桑社)を上梓予定。
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※3月31日(金)19:25~19:55、ユキヒョウ姉妹が「ウチのどうぶつえん」(NHK Eテレ)に出演。再放送は4月1日(土)9:20~9:50。
番組Instagram https://www.instagram.com/nhk_uchidou/

『幻のユキヒョウ 双子姉妹の標高4000m冒険記』

体力も能力も感性もほぼ同じ双子が、それぞれに違った職業と視点で“幻の動物”ユキヒョウの足跡を追う双子姉妹の冒険記

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