更新日:2023年05月19日 14:10
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アメリカと日本でこんなに違う子育て事情。日本のざんねんな「パパ育休」にガッカリする理由

アメリカでの子育ては「夫婦の連携プレー」がカギ

子連れパパ

アメリカ人男性は育児に積極的にかかわる印象。街でも公園でも多くの子連れパパの姿を見かける

 前述のとおりアメリカは公的な産休・育休制度がほぼない。出産費用も保育費もおそろしく高く、小学校に上がれば夏休みだけで6月末から9月上旬まで休校。いくつもの壁がある環境で、なぜ夫婦ともにキャリアと子育てを両立できるのか?  まず産休・育休だが、お互いに1年で3か月の無給休暇、2週間の有給休暇があるなら、夫婦それぞれ、ずらして取得すれば生後7か月まで保育園に預けなくてすむ。つまりリレー方式で、妻の休暇終了とともに夫が育児をバトンタッチし、妻が仕事に復帰すれば良いというわけだ。それは学齢期の子どもの育児であっても、学校の休暇に応用できる技と言えよう。  また、保育費についても、夫婦どちらかの仕事でフレキシブルな労働が可能であれば、フルタイムで週5日預けず、週3日でよくなる場合も。職種によっては、夜明け前から働いて昼終わりとしたり、1日8時間勤務のところを10時間働いて週4日勤務、週休3日にしたりできることも多い。オフィスで残業はせずに仕事があれば家に持ち帰る、子育て中は部分的に在宅勤務や時短勤務にきり替える、授乳や送迎、学校のイベントに合わせて仕事を抜ける、そうした融通の利くアメリカの職場環境も、夫婦での子育てサポートにつながっている。

育休が終わっても育児は続く…夫はどうすれば?

アメリカのパパたち

子どもを外に連れ出し、ボール遊びをさせるアメリカのパパたち

 育児は24時間、休みがない。特に新生児の頃は予測がつかない中で付きっきりで対応しなくてはならないし、親の行動ひとつひとつが子どもの生死や発育に関わると思うと手を抜けない。予想に基づきコントロールできる分、オフィスで仕事をしているほうがよっぽど楽だ。これは女性であれ、男性であれ、自分で経験してみないとなかなかわからない。  家事やリスキリングどころか、ゆっくり食事らしい食事を味わうことさえ満足にできない妻は、頻回授乳期、夜中も3時間おきに授乳し、慢性的な睡眠不足に陥っている。そんな妻に、「今日1日、何をしていたの?」と聞いて、地雷を踏んでいないだろうか? 妻は「育児をしていた」と答えるしかないし、実際にそうなのだ。怒らせる前に自分ができることを考えよう。  育休を取ってもほぼ何もしないという日本人男性に対し、アメリカ人男性は家事・育児は「やって当たり前」である。母乳は出なくても、搾乳した母乳や液体ミルクを与えてゲップをさせ、寝かしつける。離乳食以降は買い物をして家族の料理を作り、皿に取り分けて食べさせ、汚れたテーブルや床の後始末、洗い物をして、おむつ替えまたはトイレの世話をし、お風呂を用意して沐浴させたら、髪を乾かし、パジャマを着せて汚れたものを洗濯し、歯磨きと絵本読み聞かせ、寝かしつけ…と、やることは山ほどあるし、母親でなくてもできることばかりだ。  アメリカ人男性は、さらに妻から求められるものがある。それは、「パートナーとしての心づかい」だ。いたわる言葉をかけ、感謝を態度で示せるかどうか、夫は常にジャッジされている。妻を女性として扱うことも大事なポイント。だからアメリカ人男性はベビーシッターや親戚に子どもを預けて、ほんの1、2時間でも妻と「デート」に出かける。そして妻は、また朝起きて髪をとかし、夫に笑顔を向けることができるようになるのだ。
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育休は「親の仕事」「夫の仕事」を楽しめる絶好の機会
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アメリカ・シアトル在住。エディター歴20年以上。現地の日系タウン誌編集長職に10年以上。日米のメディアでライフスタイル、トレンド、アート、グルメ、カルチャー、旅、観光、歴史、バイリンガル育児、インタビュー、コミック/イラストエッセイなど、多数の記事を執筆・寄稿する傍ら、米企業ウェブサイトを中心に翻訳・コピーライティング業にも従事。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員

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