更新日:2023年04月25日 20:11
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“絶対に落とせない選挙区”は維新に軍配。「自民圧勝」のはずが接戦になった理由

議席をひとつ増やした社民党

大椿裕子

吉田忠智議員の辞職により、繰り上げ当選した大椿裕子議員

大分の参議院補選は別の意味でも注目が集まりました。比例当選者が辞職した場合、次点の候補者が繰り上げ当選するからです。 前述したように、吉田候補は立憲民主党の議員ですが当選時は社民党の議員でした。そのため、今回は社民党から繰り上げ当選者が出ることになり、社民党の名簿で比例順位が次点だった大椿裕子さんが繰り上げ当選しています。 今回の5補選で社民党は候補者を擁立していませんが、議席をひとつ増やすという椿事が起こったのでした。

「和歌山1区の事件」がもたらした影響

統一地方選の後半戦で同時に実施された衆参5補選では、選挙情勢とは別の意味で注目を集めた出来事がありました。先述した和歌山1区で、岸田首相が爆発物を投げられた事件です。
大和西大寺駅前

安倍晋三元首相が銃撃された奈良県奈良市の大和西大寺駅前。道路の拡幅工事により、当時の風景は消失。銃撃された場所を示すような標はなく、慰霊碑などを建立する予定はない

昨夏の参議院選では、奈良県奈良市の大和西大寺駅前で応援演説中だった安倍晋三元首相が凶弾に倒れる事件が起きています。安倍元首相の事件が記憶に新しいこともあり、岸田首相に向かって爆発物が投げ込まれるという事態に肝を冷やした人は少なくありません。幸いなことに岸田首相に怪我はありませんでしたが、会場周辺は騒然となりました。 これらの経緯から、狙われた岸田首相だけではなく、菅義偉元首相や東京都の小池百合子都知事が街頭演説の応援に立つ際にも周辺警備が強化されています。そのため、街頭演説では選挙カーに近づくことが難しくなり、遠くから眺めることしかできなくなりました。 2020年に新型コロナウイルスが感染拡大してから、選挙戦では候補者や応援弁士といった政治家と有権者との触れ合う機会が急激に減りました。 それまでの街頭演説は駅前に多くの人を集め、大規模な街頭演説を実施することも珍しくありませんでした。候補者や応援弁士は大きな声で支持を訴え、集まった有権者たちと握手をしたり、写真撮影に興じたりするのが一般的だったのです。 しかし、コロナ禍での選挙は接触を避けることになり、握手ができなくなりました。それでも候補者たちは支持を広げるためにグータッチをするといったスタイルに転換。できるだけ接触するように工夫を重ねていました。
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コロナ前に戻りつつあったのに…
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フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。首相官邸で実施される首相会見にはフリーランスで唯一のカメラマンとしても参加し、官邸への出入りは10年超。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)などがある Twitter:@ogawahiro

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