「何より僕がコンロでこだわっているのは、魚焼き器は要らないということ。1000軒以上も家を建ててきましたが、実は使っていない人が本当に多い。あれだけ大きなスペースを取っていながら、簡単に掃除ができず、通気口の臭いも取れず、部屋じゅうに匂いが広がってしまうので、使い勝手が悪すぎる。事実、魚焼き器があっても電子レンジやフライパンで魚を焼いている人が増えています。新築であればあるほど、その傾向は強いですね」 押村が提唱する「いらないもの」がもう一つ。コンロの前にあるアレだ。 「油ハネを防ぐためのオイルガードもいりません。一見、役に立ちそうですが、手入れが面倒です。コンロの向こうにあるわけですから、手を伸ばさないといけない。もし背の低い方であれば、なおさら掃除が大変だと思います。コンロの2面を壁で囲う形にするケースも同様。そもそも人間は、手を伸ばしてタテに拭く、という動作が苦手。それならキッチンの天板に油を飛ばして、あとで体重をかけて横に拭き掃除をしたほうが楽ちんで清掃性が高い。もちろん、その際には、油ハネしてもいい天板を選ぶ必要はありますが、僕の手がけている家でも、オイルガードを外したら、皆さんにとても好評です」 ちなみに、押村のおすすめコンロは、リンナイのドロップインコンロだ。もちろん4口で五徳がふたつに分かれるタイプだ。リフォームや新築を考えている人は、ぜひ参考にしてほしい。 〈取材・文／ツクイヨシヒサ〉 （おしむらともや）スタイラス所属。20代で建築、都市計画、インテリア、暮らしについてカナダ、アメリカで学び、輸入住宅などを手掛けるも挫折、住宅とは何かを見失う。大手ハウスメーカーや大手デベロッパーにコンサルティングして感じた「業界の嘘」と「都合の良い慣習」に納得できず、悪しき慣習にまみれた日本の住宅づくりからの逸脱が始まり、住宅業界の異端児となり、1000棟以上の建築設計を手掛ける。2022年7月にYoutubeチャンネル『ジュータクギャング』を開設。近著『美しい家のつくりかた』