更新日:2023年06月02日 15:13
スポーツ

新井監督のもとで浮上する広島カープ。“今の時代にマッチ”した「押し付けない指導」

現役時代は「50本走っていた」が…

 昨年の秋季キャンプではこんなことがあった。広島の名物メニューとなっている練習の最後に行う「坂道ダッシュ」。途中から見守っていた新井は、「何本やっているの?」と聞くと、選手からの「3本です」という答えに驚いた。なぜなら新井監督が現役時代のときには「50本走っていた」からだ。  新井監督は選手たちにこう伝えた。 「あくまでも参考だけど、オレは50本を毎日走っていたよ」  その後すぐにその場から離れたのだが、選手たちはノルマの3本で終えてしまった。けれども新井監督はそれ以上強制することはしなかった。 「自分の若いときと今の若い選手とでは、練習に対する目的意識も考え方も違う」 「こういうやり方もあるよ」と伝えて、後は選手の判断に任せる。指導者からの「これは絶対にやりなさい」という一方的に押しつけるような指導は違うと新井監督は考えていた。

自らが非難を浴びた経験を持っているからこそ…

 また、シーズンに入ってからは、選手を責めるような発言を一切していない。今季の開幕カードとなったヤクルトに3連敗を喫しても、新井監督は「まだ始まったばかり」と冷静そのものだった。 「チームがダメなら自分が非難を浴びればいい。ボロクソに言われるのは慣れている」  新井監督は監督就任時からその覚悟を持っていた。  新井がFAで阪神に移籍した晩年、チャンスで打席が回ってくると、併殺打を多く打つ場面がたびたびあった。一部の心ない阪神ファンから、「5-4-3は新井の代名詞」などと揶揄された時期もあった。  そうした苦難の時期も経験しているだけに、選手の苦悩もよく理解できる。だからこそ「自分がみんなの防波堤となる」という気概を持って指揮にあたっているのだろう。
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選手を責めるようなことは一切言わない
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スポーツジャーナリスト。高校野球やプロ野球を中心とした取材が多い。雑誌や書籍のほか、「文春オンライン」など多数のネットメディアでも執筆。著書に『コロナに翻弄された甲子園』『オイシックス新潟アルビレックスBCの挑戦』(いずれも双葉社)

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