更新日:2023年06月02日 15:13
スポーツ

新井監督のもとで浮上する広島カープ。“今の時代にマッチ”した「押し付けない指導」

簡単に揺るがない「選手への信頼」

 もう1つ、新井監督の采配の特長として、「どんなことがあっても、起用する選手を信頼して送り出す」という点が挙げられる。打者が1試合無安打に終わったからと言って、打順を必要以上にいじくらない。あるいは投手が1、2試合救援に失敗したからと言って、安易な配置転換を行わない。  4月30日の東京ドームの巨人戦で、こんなことがあった。抑えの栗林良吏が3対2で1点リードした場面で登板するも、二死走者なしから岡本和真に四球。続く中田翔が栗林の初球をとらえて、左中間へサヨナラ本塁打を打たれて敗れた。  栗林は開幕から1ヵ月足らずで、過去2年間の通算黒星の3敗を上回る4敗目を喫したものの、試合後に新井監督は「彼は今後も抑えで行ってもらう」と明言。  この試合に敗れた翌日、栗林は右内転筋筋挫傷による故障で登録抹消となったものの、新井監督の選手に対する信頼は簡単には揺るがないという姿勢を垣間見た思いがした。

選手を責めるようなことは一切言わない

 新井監督は選手に対してこんな話をしている。 「チームの成績が悪い、勝てないときにどんな行動をして、どんな発言するのか。そのときに人間の本性が出るものなんだよ」  これは何も選手だけではなく、監督も含めた首脳陣も同じだと、新井監督は考えていた。試合での失敗を「こうしなかったからだ」「もっとこうすべきだ」などとメディアを通じて選手を責めるようなことは一切言わない。  新井監督は現役時代、天才と呼べるような選手ではなかった。努力に努力を積み重ねた結果、2000安打を放つ選手へと成長し、名球会入りを果たした。誰よりも苦労して技術をモノにしたからこそ、うまくいかない選手の気持ちを理解し、寄り添おうとする心があるのだろう。  決して感情的にならず、冷静かつ常に前を向いて選手を試合に送り出して采配を振るう。新井監督は今の時代の選手の気質にマッチしている指揮官であることは間違いない。
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選手たちに対して「家族同然」と話す
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スポーツジャーナリスト。高校野球やプロ野球を中心とした取材が多い。雑誌や書籍のほか、「文春オンライン」など多数のネットメディアでも執筆。著書に『コロナに翻弄された甲子園』『オイシックス新潟アルビレックスBCの挑戦』(いずれも双葉社)

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