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「頑張りすぎて逆に疲れそう」アメリカのキャンパーから見た日本のキャンプブーム

アメリカでもコロナ禍を機にキャンプ人気が拡大!

キャンプ

駐車スペース、テント設営スペース、ピクニックテーブル、ファイヤーピットが各サイトに備わる

 The Dyrt, Incの「2023年版キャンピング・レポート」によると、アメリカのキャンプ参加人口は8000万人以上で、コロナ禍の2021年、2022年に初めてキャンプを体験した人は1550万人に上るそう。キャンピングカーの売り上げも好調で、キャンパー全体の44.8%が利用している。キャンプ場探しが年々難しくなっており、困難だと回答したキャンパーは2022年では2019年の5倍の数という。  コロナ禍では、わが家も週末キャンプが夏休み最大のアクティビティーとなっていた。毎年、夏の間に2、3回はキャンプを楽しむようにしているが、ここ3年、週末はどこも当日の空きはなく、人気のキャンプ場は半年前からの予約開始で平日さえすぐに空きが埋まってしまう。その他のキャンプ場も、週末は特に3カ月前までの予約が必須となっている。  早い者勝ちの予約が不要な無料キャンプ場もたくさんあるが、満杯で入れない場合を考えると、予定がかなりフレキシブルでない限り、子連れ利用は難しい。わが家をはじめ、ファミリーが多く訪れるのは、オンラインで事前予約を受け付ける公営のキャンプ場だ。このインフレで値上がりは避けられなかったものの、ファミリー向けサイトではひと晩20~30ドル前後(約2800~4200円)で済むのはありがたい。  日本と違うのは、個々に広々としたスペースを確保できること。ここシアトル周辺は針葉樹林が生い茂る緑豊かな環境ということもあり、それぞれのサイトがいい感じで木々に囲まれており、プライバシーを保つための目隠し代わりとなっている。公営のキャンプ場には、薪をくべて調理できるファイヤーピット、大きなピクニックテーブルも、サイトごとに完備。水栓やトイレ、シャワー、ゴミ捨て場などは共用だが、半数ほどがキャンピングカー派のためか、混雑することはまったくなく、待たずにすぐ使える。
キャンプ場

キャンピング・ホストが、キャンプ場を管理。キャンパーへの薪の販売も行う

 必要最低限の設備が整い、何かあれば、キャンプ場管理者であるホスト・キャンパーが常駐するので頼りにできる。ゆっくり2、3泊しても、コストは一般的なホテルの1泊分にも満たない。こうしてアメリカ人は、家族や仲間と、あるいはソロで、シンプルながらもストレスなくキャンプを楽しんでいる。

アメリカ流「過不足のない」ファミキャンとは?

キャビン

キャンプ場内にあるキャビン。ここに泊まれば、テントの設営さえ不要で楽ちん

 アメリカではグランピング人気も落ち着き、最近はむしろ、ミニマムな滞在に注目が集まっている。都会の日常から離れ、大自然の中に身を置き、心やすらぐひと時を過ごす。「マインドフルネス」や「ウェルネス・トラベル」という言葉に置き換えられる、「リラックスした旅時間」こそ、今のアメリカ人が求めるもの。それが、昨今のキャンプの一大ブームにつながっている。  つまり、「何もしない」ことを目的としているのだ。アメリカ流ゆるキャンプの醍醐味とも言える。いろいろがんばらなくていい。自然の中で寝泊まりするだけで、それは非日常の体験となる。  かくいう筆者も、最初の頃は典型的な日本人思考で、あれも必要、これもあると便利……と荷物を増やし、キャンプらしいレシピを考え、材料を用意して、とにかく忙しくしていた記憶がある。結局は、準備だけで疲れてしまうパターンだ。しかし、そんな苦労をしようとしまいと関係なく、子どもはテントの中でゴロゴロしているだけで十分楽しいのだ。  ただでさえ、大きい車でないと、子ども用品は幅を取る。アウトドア用の大型ベビーカーやキャリア、ワゴン、プレイテント、プレイペン、サークル、ビーチ用遊具などは、あればあったで楽しいし、役立つかもしれない。でも、せっかくパズルのようにして車のトランクに詰め込んでも、当の子どもは関心を持ってくれなかった、という場合も。
キャンプ場の歩道

キャンプ場の歩道には子どもたちのチョーク・アートも。いつもと違う大きなキャンパスでお絵かきし放題!

 わが息子も、キャンプ場に自転車やスクーターを持ち込み、1回目こそ楽しんでいたが、2回目以降は見向きもしない(苦笑)。ヘルメットやなんやら、持っていくだけ無駄だった。それよりも切り株に登ったり、薪割りをしてみたり、そこらに落ちている枝から「お気に入りの1本」を探したりするほうがうれしいようだ。
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自然の中で食べればインスタントでもおいしい
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アメリカ・シアトル在住。エディター歴20年以上。現地の日系タウン誌編集長職に10年以上。日米のメディアでライフスタイル、トレンド、アート、グルメ、カルチャー、旅、観光、歴史、バイリンガル育児、インタビュー、コミック/イラストエッセイなど、多数の記事を執筆・寄稿する傍ら、米企業ウェブサイトを中心に翻訳・コピーライティング業にも従事。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員

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