更新日:2023年08月25日 17:16
ライフ

性風俗、犯罪、怪異現象…“住みたい街ランキング上位”「池袋」という街の正体

少し歩くだけで別の街に行った感覚に

池袋 

東京芸術劇場

北口の繁華街は、歌舞伎町のように居酒屋と風俗店がひしめいているが、その同じ場所には中国語の看板がちらほら見える。池袋北口は、ここ10年と少しで、東京の中でも有数のチャイナタウンが形成されている。 そんな猥雑な区画があるかと思えば、そこからちょっと歩くと、突然、堂々たる東京芸術劇場が現れる。歌舞伎町のすぐ横に銀座や日比谷が現れた感じ。 でも、その裏手にはちゃっかりラブホテルがあったりするし、東京芸術劇場から少し歩けば、立教大学があって、学生街の様相も呈する。さしずめ、高田馬場といったところか。 これは西口・北口エリアの話で、東口に行けば、駅前はビッグカメラやヤマダ電機などの大型家電量販店が軒を並べる電気街の雰囲気になり、そこからさらに歩けば、「animate」の本店があって、その横には2.5次元ミュージカルの劇場があって「腐女子たちの街」という様子になる。今度は、秋葉原である。

新宿・渋谷と比べても池袋の特異性は際立つ

池袋 animate

animateのようす

またまた歩けば、今度はサンシャインシティが出てきて、そこに続く「サンシャイン通り」にはファミリーやカップルがたくさんだ。 ただ、サンシャインの横の公園にいくと、一転、寂しげな雰囲気になる。そこには「慰霊碑」があって、かつてそこが太平洋戦争の戦争犯罪者たちが収監された巣鴨プリズンの跡地であったことが思い出される。 ざっと書いていても、池袋という街は、およそ一つの街とは思えないほど、その中にいろいろなものを含んでいる。しかも、それらは、ほんとうにただ別々に存在していて、なにか、それらが合わさって一つの「池袋」という街を作っている感じがしない。 これは、新宿や渋谷と比較してみるとよくわかる。新宿は、歌舞伎町やゴールデン街を有する繁華街としての東口と、東京都庁に代表されるオフィス街の西口、という性格の異なる街がしっかりと分かれて存在している。とってもシンプルで、語りやすい。 渋谷は、全体として若者の街、というところだろうか。もちろん、道玄坂と宮益坂、桜丘で雰囲気は違うけれども、それでも全体として若者が多く集う街というイメージを持っている。 数十m単位で街の雰囲気が変わる池袋は、やはりどこか混沌としていて、一つの池袋像を持たない。それが、これまでこの街があまり語られてこなかった原因ではないだろうか。
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「暗い池袋」と同時に存在する「明るい池袋」
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ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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