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「買い物ができず不便」は的外れな感想…西武池袋本店のストは「注目すべき出来事」だった

宇都宮でも運航が開始された「LRT」とは

LRTとは何のことでしょうか? 鉄道に詳しくない方に向けて簡単に説明すると、LRTとは新型の路面電車を走らせて街を活性化させるまちづくりの概念を指します。路面電車と聞くと、古き良き昭和を思い浮かべる人も少なくありません。しかし、欧米ではLRT推進が叫ばれ、むしろ導入が相次いでいます。 国内に目を転じても、今年8月26日には栃木県宇都宮市で宇都宮ライトレールと命名された新型路面電車が運行を開始しました。ここ数日間、宇都宮ライトレールはニュースでも大きく取り上げられているので、目にした読者も少なくないでしょう。 高野区長は池袋生まれの池袋育ちだから、都電への思いが強いから池袋にLRTを走らせたいのだろうと考える人もいることでしょう。しかし、高野区長は都電荒川線を利用したことがほとんどなかったようです。実際、高野区長がLRT計画を推進するようになったのは区長就任後に視察でドイツのライプツィヒを訪れたことがきっかけでした。 ライプツィヒでは路面電車が主要交通として市民に広く利用されています。高野区長も試しに乗車しました。すると、想像以上に快適な乗り物であることを実感します。その利便性を実感してから、路面電車に対する考えが変わっていったのです。

「ビックカメラやヤマダデンキはあるのに」という主張は…

高野前区長は「西武百貨店からグリーン大通りにかけての歩けるまちづくり」で、LRTの停留所が西武百貨店の前にあり、そこからグリーン大通りを走るというイメージを抱きました。LRTを実現するため、高野区長はグリーン大通りの整備に取り掛かります。植栽を丹念に手入れし、街灯もありきたりなデザインからオシャレなモノへと取り替えるといった工夫を凝らしました。 また、「西武百貨店からグリーン大通りにかけての歩けるまちづくり」で肝心だったのが道路沿いの店舗構成です。高野区長は、西武池袋本店を核に、グリーン大通りを背骨と考えて、池袋駅東口の整備を推進していました。 高野区長がこの問題に反対表明した際に、「ビックカメラやヤマダデンキは立地しているのに、なぜヨドバシカメラはダメなのか? 矛盾している」という意見も多く見られました。これは、問題の本質を理解していない指摘です。 この指摘について、筆者は何度もいろいろな媒体に書いています。そのため、ここでは簡潔に説明するだけにとどめますが、問題なのはヨドバシカメラが出店する位置です。 ビックカメラもヤマダデンキも、池袋駅東口からグリーン大通りが延びている位置にはありません。微妙にズレています。この微妙なズレが重要な意味を持っているのです。
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高際区長のコメントは踏み込み過ぎ?
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フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。首相官邸で実施される首相会見にはフリーランスで唯一のカメラマンとしても参加し、官邸への出入りは10年超。著書に『鉄道がつなぐ昭和100年史』(ビジネス社)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)などがある Twitter:@ogawahiro

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