明治大学教授の鹿島茂氏「夫は成果達成主義を捨て、妻が主導権を持つSEXを」
―[30代既婚者[リアルSEX]白書]―
「まだまだ楽しい!」という夫婦がいれば、「とっくにセックスレス」というカップルも。人によってはすでに「不倫」を経験していたり……。熟年夫婦のデータはよく目にするが、30代のSEXライフは意外と調査されていない。そこで本誌では既婚者300人を対象に、性生活の中身に迫るアンケートを実施。さらに、夫婦のSEXのさまざまなパターンへの詳細な聞き取り調査を通して、今どきの30代夫婦の「SEXの実像」をリポートする
夫は成果達成主義を捨て、妻が主導権を持つSEXを
今回の調査をまとめれば、30代の夫婦には結婚後もSEXを楽しむ層が一定数いる一方、誰しも現状には何らかの不満を感じているらしい、ということになる。
「些細な不満は、いずれSEXという行為そのものが面倒だと感じてしまうことに繋がる。これは、非常に危険なことです」と警鐘を鳴らすのは、フランス文学者で明治大学教授の鹿島茂氏だ。
氏によれば、夫婦間のSEXに根ざすこうした諸問題は、実は日本特有の資本主義構造とも深くかかわっているという。
「そもそも、わざわざムードをつくり、相手を口説いて初めて達成されるSEXとは、いわば“面倒くささの最たるもの”。普段から一緒に過ごし、改めて誘うのが気恥ずかしい夫婦となればなおさらです。そして、日本の資本主義は、この”面倒くさいこと”をいかになくすか、に腐心してきた。我々はその利便性に慣れ親しむあまり、ともすれば”夫婦のSEXなどという面倒なことはしたくない”と考えがちになっているのです」
利便性を追求する過程で、我々日本人はまた、SEXの分野においても”かゆいところに手が届く”産業――ビデオBOXやオナホールなどを作り出してきた。
「結果として、日本では一人で性処理できる環境が完璧に構築され、欧米のようにカップル単位で行動する習慣も希薄な”お一人様”優遇文化が完成した。こうして”面倒くささ”をひたすら回避し続ければ、子孫も生まれず、亡国への道を辿りかねません」
家庭の問題が広く国家にまで波及しかねないと語る鹿島氏。では今後、30代夫婦の理想的なSEXはどうあるべきなのか?
「大切なのは、まず“SEXの非対称性”を認識すること。夫にとって気持ちいいことが、妻にとって必ずしも気持ちいいわけではないんです。だから、”イカせるまでピストン運動を繰り返す”などという成果達成主義に走るのはやめるべき。むしろ、騎乗位で妻に主導権を握らせるくらいがちょうどいいのです」
“男たるもの””夫たるもの”と意気込むより、肩の力を抜いて臨むことが、SEXライフを長続きさせる最適解なのかもしれない。
【鹿島 茂】
フランス文学者、明治大学国際日本学部教授。専門は19世紀フランス社会・風俗。『セックスレス亡国論』(朝日新聞出版)など多方面で精力的に執筆や翻訳を行う
取材・文/加藤カジカ 古場俊明 大地ワレメ 持丸千乃 金谷亜美(本誌)
取材/島影真奈美(馬場企画)
撮影/菊竹 規 山川修一(本誌)
アンケート協力/メディアパーク
― 30代既婚者[リアルSEX]白書【16】 ―
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